【ビジネスリーダー×洋服の青山】お困りごとから生まれた、ジャケット共創ストーリー

2021/10/5
ビジネスウェア3.0を定義する」というミッションを掲げ、さまざまな取り組みを行っている共創コミュニティ「シン・シゴト服ラボ」。NewsPicksユーザーの中から、活動内容への関心が高いメンバーが集まって誕生しました
コミュニティメンバーは、洋服の青山などビジネスウェア専門店を運営する青山商事と一緒に、働き方が激変する時代の中での新しいビジネスウェアのあり方について議論を交わし、商品やサービスを一緒に開発(共創)することを目指しています。
そして10月5日、ついにコミュニティ発の全く新しいジャケット「WAGAMAMA JACKET(ワガママ・ジャケット)」が「クラウドファンディングサイト『Makuake(マクアケ)』」でリリースされました。その機能や特徴について、気になる方はMakuakeページをご覧ください。(※プロジェクトは371%の達成ですでに終了しています)
服作りの経験が全くなかったコミュニティメンバーたちは、開発した商品が世に出た今、何を思うのか。洋服の青山の商品部のお2人も交え、座談会形式でお届けします。
【登場人物紹介(敬称略)】

●シン・シゴト服ラボ コミュニティメンバー
友岡賢二
:フジテック株式会社 CIO/CDO。松下電器産業株式会社(現:パナソニック株式会社)、株式会社ファーストリテイリングを経て2014年から現職。シン・シゴト服ラボでは商品開発プロジェクトに参画し、他のメンバーと一緒に「WAGAMAMA JACKET」の開発を行う。

渡辺美佐:広島県福山市出身、東京都在住。アパレル会社向けの営業に従事。マイブームはスマートウォッチを使った睡眠分析。シン・シゴト服ラボでは商品開発プロジェクトに参画し、他のメンバーと一緒に「WAGAMAMA JACKET」の開発を行う。

安藤晃規:総合電機メーカーにてエンジニアとして従事後、現在はサイバーセキュリティコンサルタントとして従事。実家が服の卸業を営んでおり、衣服へ関心も高い。シン・シゴト服ラボでは商品開発プロジェクトに参画し、他のメンバーと一緒に「WAGAMAMA JACKET」の開発を行う。

●青山商事メンバー
岡本政和:青山商事 総合企画部グループ長・リブランディング推進室室長補佐。シン・シゴト服ラボでは商品開発プロジェクトマネージャーを務め、隔週の企画会議を運営し、コミュニティ発の新商品を生み出しを牽引。

有村泰彦:青山商事 商品部 マネージャー。洋品部門担当。シン・シゴト服ラボでは村上智彦と一緒に、レビュー会を通してコミュニティメンバーの要望を直接聞きながら新商品の企画、サンプル作成、製造までを手がけた。

村上智彦:青山商事 商品部 マネージャー。カジュアル部門担当。シン・シゴト服ラボでは有村泰彦と一緒に、レビュー会を通してコミュニティメンバーの要望を直接聞きながら新商品の企画、サンプル作成、製造までを手がけた。

たった1人の「狂喜乱舞」を目指して

岡本 とうとう「クラウドファンディングサイト『Makuake(マクアケ)』」で我々が作った商品の販売が行われますが、率直に今の心境はいかがですか?
安藤 「本当にできたんだ」という驚きが大きいですね。プロジェクト発足当初は、実際にプロダクトが作れるのか半信半疑だったので。
渡辺 同感です。最初は本当に、商品ができるところまでは想像がつかなかったので、感慨深いです。青山商事の方々をはじめ、いろんな方のフォローがあってこそ実現したのかなと思っています。
友岡 今回我々が開発した商品は、「100人いれば100人が欲しいと思うモノ」ではありません。そもそもそこは狙ってないですよね。100人いれば5人ぐらいに響き、その内1人が「私のために作ってくれた」と「狂喜乱舞」する、そんな特定のターゲットに深く刺さる商品だと思います。
だからこそ、次は我々の商品が刺さる層を見つけ、ちゃんとコミュニケーションがとれることが重要だと思います。どうすれば「WAGAMAMA JACKET」を本当に求める人から発見してもらえるのか、改めてコミュニティメンバーと一緒に考えていければと思います。
プロジェクトメンバーの友岡さん

テレワーク特化に振り切ったからこそ辿り着いた「ブルー」

岡本 今回の共創は新型コロナウイルス感染症の流行やメンバーの居住地などの理由から、オンラインのみで進められました。難しさを感じるポイントはありましたか?
安藤 他のプロジェクトメンバーが想像しているユーザーや、利用シーンがなかなか見えてこなかったのが難しかったです。仕事の仕方も仕事場所も、携わっている人も全然違う多様なメンバーが集まっているからこその難しさなのではないでしょうか。
プロジェクトメンバーの安藤さん、WAGAMAMA JACKET(青色)を着用
友岡 私の場合は、難しさよりも楽しさのほうが大きかったです。リモートで議論を前に進めるためには、常に全員が繋がっている訳ではないので、自分が思うことをどんどん文字化しなければいけません。煩わしい一方で、ドキュメントに残すことで手戻りが少なくなるという側面もあります。プロジェクトを進めるスピードが上がるので、個人的にはオンラインで完結する方が好きです。
岡本 今回、全く新しい商品開発のやり方で、商品部の2人はとくに難しさを感じていたかと思います。有村さん、村上さん、率直にいかがでしょうか?
村上 エンドユーザーの皆様と一緒にモノを作ること自体が初めての経験で、すごく楽しかったですし、刺激にもなりました。とくにWeb上で製品の出来栄えを確認して改善点を探す作業は、普段だと絶対にしないので、大変学びになりました。おかげで、チャレンジングなブルーのカラーが生まれたと思っています。
洋服の青山水道橋店に併設されているコワーキングスペース「BeSmart」に展示されているWAGAMAMA JACKETの商品サンプル。鮮やかな青は、一見すると強すぎる印象だがオンライン上ではよく映える仕上がりになっている
さらに、今回は涼しさを追求するため保冷剤ポケットをつけていて、そんなジャケットはこの世のどこにもありません。固定概念に捉われないモノづくりができて、苦労もありましたが、楽しかったなというのが一番の感想です。
有村 私も、10年近くモノづくりの仕事に携わってきたなか、初めてエンドユーザーの声を元にゼロから製品を作りました。一緒にプロジェクトを進めるメンバーの誰とも一度も会わずに進めるのは、不安もありながらいい経験になったかなと思います。

共創だからこそ辿り着いたゴール

岡本 今度は逆に、共創において楽しいと感じた瞬間を教えてください。
渡辺 絶対に私が思い付かないようなアイデアが会議中に出た瞬間です。印象に残っているのは友岡さんの意見で「男性も着られるワンピース」というアイデアでした。テレワークなら上半身さえ映ればいいので、通気性の観点から男性向けワンピースもありなのではという意見でした。今回は別の商品を作りましたが、機会があればぜひ男性用のワンピース作りにも挑戦したいです。
安藤 私は議論してるなかで、うまく表現できない感覚にピッタリの言葉が見つかって「あー、それだ!」となる瞬間が面白かったです。印象的だったのは「打ち水」というキーワード。クーラーに頼らず羽織るだけで涼しくなるというコンセプトをどう打ち出すか考えていたとき「打ち水に近いのでは」という意見が出ました。
その瞬間、その場にいたメンバー全員が「それだ!」と納得したんです。さらに打ち水は日本に昔から存在する習慣で、非常に日本らしい文化とも言え、その要素を自分たちの開発する製品に取り入れるのは、すごく素敵だと思いましたね。
岡本 その瞬間には私も立ち会いましたが、すごく印象に残っています。何かみんなで共感しながら一緒に作れると、楽しさが何倍にもなりますよね。議論が止まったときでも、誰かの一言でガッと進むのは共創ならではなのかなと感じます。
有村 私も「打ち水」は印象に残っています。これだけデジタル化が推奨されているなか、アナログな保冷剤を使うのは、逆に新鮮でした。
友岡 個人的には今回の取り組みで改めて、オンラインで画面越しで見る映像の「解像度が低い」ことやバーチャル背景との「コントラストが強い」という特性を再認識できました。たとえば、画面越しでは相手の襟がどんなデザインなのかは、解像度が低いのでほとんど気になりません。
一方でバーチャル背景とのコントラストが強いので、肩のラインの美しさはリアル以上に気になります。そして私の持っているジャケットではオンライン特有のモアレ(干渉縞)が出るものもあります。細かい柄やデザインは避けなければなりません。
このような特性を理解した上で、着心地重視で思い切ってデザインを簡略化できるパーツもありながら、オンラインだから絶対に妥協できないデザインパーツもあります。画面越しで、見た目の印象を把握しながらデザインを考えるのは、さながら人間の目をハッキングしているような感覚で非常にワクワクしました。

みんなで議論したターゲットに届けたい

岡本 改めて、我々が開発したジャケットはどんな人に着てほしいと思いますか?
渡辺 テレワーカーのためのジャケットではありますが、外に出ても違和感がなく、しかも快適でいられるので、オフィス勤務の人にもぜひ使ってみて欲しいです。働く場所に限らず、オンライン会議向けの商品として消費者に届けられると良いのではと思います。
プロジェクトメンバーの渡辺さん
友岡 シチュエーション的には、フォーマルな装いが求められる場ではすごく活躍しそうです。例えば採用面接に面接官として参加したり、社外の講演会に登壇したり、お客様やビジネスパートナーのエグゼクティブの方々とのミーティングなどで着たい服です。若い方はもちろん、シニア世代やエグゼクティブの方々にも着て頂きたい服です。
安藤 最近はテレワークが当たり前になって、Tシャツを正装として考えている人も多いですが、そんな人にも「このジャケットを着た方がかっこいいし、楽なんだよ」って伝えたいですね。
岡本 みなさんありがとうございます。今回開発したWAGAMAMA JACKETのサンプルは、洋服の青山水道橋店併設のコワーキングスペース「BeSmart」に展示しています。ぜひ足を運んでいただけると嬉しいです。本日は本当にありがとうございました。

ビジネスパーソンの課題解決に一緒に取り組む、コミュニティメンバーを募集

シン・シゴト服ラボでは、今後も「ビジネスウェア3.0を定義する」というミッションに向け、さまざまなプロジェクトに取り組んで参ります。活動内容は服に留まらず、仕事環境そのものも「装い」と捉え、これからの社会に求められる新しいあり方の探求を続けていきます。
ビジネスウェアについて課題を感じている人はもちろん、日本型の古い慣習に疑問を感じる、仕事のパフォーマンスをもっと向上させたい、などビジネスに関する課題意識をお持ちの方も、ぜひご参加ください。企業や業界の枠を超えた挑戦を、私たちと一緒にはじめてみませんか?
コミュニティについて、さらに詳しく知りたい方はこちらへアクセスください。
編集:山尾 真実子(シン・シゴト服ラボ編集長・青山商事)
共同編集・執筆:種石 光(NewsPicks Creations)
デザイン:武田 英志(hooop)