[香港/ニューヨーク 6日 ロイター] - 中国の配車サービス最大手、滴滴出行(ディディ)が6日の米株市場で一時25%下落した。同社が違法に利用者情報を収集していたとして、中国サイバースペース管理局(CAC)が4日、スマートフォン向けアプリストア運営各社に対し、滴滴出行のアプリ配信を停止するよう命じたことが背景。

CACは5日、サイバーセキュリティ上の懸念を理由に中国の求人アプリ「BOSS直聘」とトラック配車サービスを手掛ける満幇集団(フル・トラック・アライアンス)への調査も発表。これらの企業の株価も大幅安となった。

中国は6日、こうした動きをテクノロジーセクター以外にも拡大、海外市場に上場する中国企業への監視を強化すると発表した。国境を越えたデータの流れや安全性に関する規制を強化するほか、証券市場における違法行為を取り締まり、不正な証券発行や市場操作、インサイダー取引を処罰する。

米市場に上場する中国のヒップホップイベント会社の普普文化集団(ポップ・カルチャー・グループ)は約41%値下がりした。

滴滴の終値は約20%安の12.49ドル。6月30日に上場した際の初値(16.65ドル)を大きく下回った。

同社は、国内のスマートフォン向けアプリストアから自社のアプリが削除されたことについて、自社売上高に負の影響が出るとの見通しを示した。また、ロイターに対し、新規株式公開(IPO)前に当局による調査を認識していなかったと明らかにした。

ただ、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、滴滴は米市場に上場する数週間前に、当局から新規株式公開(IPO)を延期し、ネットワークの安全性を調査するよう求められていたという。

<影響>

エキタス・リサーチのディレクター、スミート・シン氏は「滴滴が当局の取り締まり実施について数カ月前から認識していたという情報もあり、同社のガバナンスに疑念が生じるだろう」と指摘。「実際に取り締まりが数カ月前から計画されていたとすれば、すぐには終わらないことを意味する」と語った。

シンガポールのニューベスト・キャピタルのポートフォリオマネジャー、デーブ・ワン氏は「一部の投資家は、上場が当局の許可の下で進められるものと安心していたかもしれないが、明らかにそうではなかったことが分かった」と述べた。

キーター・グループのマネジングパートナー、マシュー・キーター氏は「最近のニュースを考慮すると、投資家はグローバルな機会に基づく企業のバリュエーションだけでなく、政策が発動される可能性があることや、それがここ(米国)の企業にどのような影響を与えるかについても留意しておく必要がある」と語った。

また、スパルタン・キャピタル・セキュリティーズのチーフ市場エコノミスト、ピーター・カーディロ氏は、より広範で外交的な意味合いがあると指摘。「これは必ずしも米国に言及していないものの、米国に仕返しするための裏技だ」とし、「この取り締まりは、経済的対立への扉をさらに開くものだ」と述べた。