(ブルームバーグ): 東京証券取引所の取引時間が延長される「現実的」なチャンスがあるとの見方を山道裕己社長が5日示した。現物株を売買できる時間が長くなることについて議論が深まっているという。

山道社長はブルームバーグテレビジョンとの英語でのインタビューで、「取引時間延長は前回話し合った時より現実味が増しているように思われる」と語った。東証は2014年に夜間や夕方の時間帯向けに市場を設ける案などを協議したが、証券会社の反対で棚上げされた。

東証は午後3時までとなっている取引時間を延長できるかどうかを検討する作業部会を設置。ここ10年余り、東証の取引時間は延長されていない。

現在の取引時間は前場後場合わせて5時間と世界の主要な取引所の中で最短クラス。山道社長は取引終了後のプロセスへの影響など、部会内からさまざまな意見が出ていると説明。ただ、同社長は、延長の場合でも、どの程度の時間延長になるのかは分からないとしている。

野村証券(現野村ホールディングス)出身の山道氏は今年4月に東証社長に就任。それまでは大阪取引所社長だった。

山道社長のインタビュー内容は以下の通り。

海外へのアピール

東証は長く外国企業の上場誘致に苦慮してきたが、山道社長は日本の「公正でオープン」な市場の魅力をアピールすべきだと言う。

「日本には非常に安定した民主的政府があり、規制もたいへん安定感がある」とした上で、潤沢な流動性も指摘し「アジアには他にこんな市場はない」と語った。

日本は香港から東京へと企業を呼び寄せようと、自国の資本市場を売り込んでいる。中国政府による香港締め付け強化は東京を国際的な金融センターに進化させる機会になるかもしれない。

山道社長によれば、東証への新規上場はここ数年活発。台湾のエイピア・グループやシンガポールのオムニ・プラス・システムなどのアジア企業が今年、東証に上場した。

東芝

東芝が政府の支援を得て株主総会での採決で大株主に影響を与えたとする報告書は、再び日本のコーポレートガバナンス(企業統治)に対する批判を招いた。山道社長はこの問題が外国人投資家の日本市場に関する見方に与えた影響を注視していると述べた。

「特に第三者委員会の調査報告後、東芝の状況を注意深く見守っている。東芝の問題が海外投資家からの投資の流れに悪影響を与えれば、日本の資本市場にとって由々しいことだ」と語った。

市場改革

東証は大規模な改革を計画しており、現在の「1部」市場はより少数の優良企業で構成する「プライム」市場に置き換えられ、スタートアップ向けの「グロース」および中堅の「スタンダード」の3市場に再編される見込みだ。この改革について劇的な変化は起こらないのではないかと懸念する声もあるが、山道社長はこれは終わりではなく始まりだと強調した。 

「この再編が最後ではないことを忘れてはならない」とし、今回の改革は「東証を変身させる第一歩にすぎない」と述べた。明確に定義されたコンセプトの3市場に移行することで、「国内外の投資家から選ばれる市場になる」ことを目指すと表明した。

原題:Tokyo Bourse Chief Optimistic on Extending Five-Hour Trading Day(抜粋)

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