2021/6/27

【クイズで学ぼう】お金の流れがわかる貸借対照表

NewsPicksアンカー
隔週木曜22時〜お届けしている、投資リアリティショー『INVESTORS』。

6/17(木)公開の勉強編では、累計20万部を突破した「会計クイズを解くだけで財務三表がわかる世界一楽しい決算書の読み方」の著者、大手町のランダムウォーカー氏がゲストとして再登場。
投資初心者にとって知りたいが、数字が多くてついつい避けがちな「決算書」。
損益計算書編に続き、今回はビジネス眼を鍛える上でも重要とされる「貸借対照表」をクイズ形式で楽しく学びます。
同じ自動車産業でも日産自動車とパーク24の貸借対照表を見比べれば、それぞれのビジネスモデルが浮き彫りになってきます。インベスターズ3名の白熱した議論にも注目ください。
INDEX
  • 貸借対照表=企業の財政状態を示す
  • 決算書は立体的に見る
  • お金は「右から左」に流れる
  • 日産自動車はどちらでしょう?
  • ローンは流動資産?固定資産?
  • 営業で発生するローンは「流動資産」
  • 固定資産が多い、パーク24

貸借対照表=企業の財政状態を示す

佐渡島 前回取り上げた損益計算書と同じくらい大事な貸借対照表について、今回も大手町ランダムウォーカーさんに講義をしていただきます。
大手町 貸借対照表(B/S)を一言でいうと「企業の財政状態を報告する決算書」です。
会社がどのような方法でお金を集めてきて、それをどのような資産に変えているのかというのを一つの決算書に集めています。
佐渡島 損益計算書が1年間の動きだとすると、今までのお金の集め方など全部がわかるのが貸借対照表なんですね。
大手町 そうです。例え話で言うと、野球選手だと年間打率と通算打率がありますが、損益計算書は年間打率で、貸借対照表は通算打率になります。
なので、一年間の成績表がとても良くても、全体の成績ではあまり上がらなかったら意味がないので両方重要になります。
損益計算書が積み上がって出来たものが、貸借対照表だと思ってください。
佐渡島 奥野さんはこの貸借対照表をどのような時に投資判断基準として使っていますか?
奥野 企業のその時の財政状態を見る時ですね。
そもそも誰からお金を借りていて、自己資本がどれほど厚いのか、ビジネスが安全なのか、といったことは貸借対照表からしかわからないです。
奥井:ビジネスの安全性ということでしょうか?
奥野 この会社にお金を貸していいのか?きちんと返ってくるのか?といったところです。

決算書は立体的に見る

佐渡島 損益計算書と貸借対照表だと見抜けるものにはどのような違いがありますか?
大手町 会社によってビジネスに必要な資産は変わってきます。
例えば、鉄道業とIT業だと必要な資産が異なります。IT業だと極論をいうとパソコンとネット環境があれば出来てしまうんですよね。だからそんなに資産は必要じゃないのですが、鉄道業だと鉄道も駅も必要。
貸借対照表にはどのような資産が必要かあらわれるので、ビジネスの特徴が浮き彫りになります。
佐渡島 つまり、損益計算書でも貸借対照表でもビジネスモデルがわかるけれど、そのビジネスモデルを利益から見るか、それとも資産から見るかといった違いがあるんですね。
しかも両方からビジネスモデルを推測するとビジネスモデルに対する仮説の精度が上がると。
大手町 損益計算書からだとお金のかけ方が見えるけれど、貸借対照表からだとあまりお金のかけ方は見れない。
なので、決算書はそれぞれの部分を合わせて立体的に見るという使い方が一番綺麗なのかなと思います。
大手町 貸借対照表を見ると会社の財政状況がわかると言いましたが、具体的に何がわかるのかを3つ並べました。
①会社の規模(どれだけ資産額があるか)
②資産や負債の中身(各科目の内訳)
③会社の純資産(返済する必要のない資産)
会社が過年度(過ぎた会計年度)に利益を積み上げていればこの純資産が非常に厚くなっていたり、逆に利益が溜まりにくい場合、純資産が薄くなっているという形になります。

お金は「右から左」に流れる

大手町 貸借対照表はバランスシート (Balance Sheet) とも言われているのですが、それはなぜかと言うと、貸借対照表は真ん中で割って、左側が運用サイドで右側が調達サイド、となっています。
真ん中を割って、左の合計額と右の合計額が一致するからこそバランスしている、ということでバランスシートとよく言われています。
大手町 もうひとつ重要な視点があるのですが、お金の流れが「右から左」が正しい流れなんですね。
どういうことかと言うと、右には負債と純資産があるんですが、これは資金調達の方法を表しています。
どのような方法で会社がお金を集めてきたのかが貸借対照表の右側に表されます。
負債は返済が必要な資金調達方法、純資産は返済が不要な資金調達方法となっています。
大手町 返済が必要な資金調達方法の代表例が銀行からの借入金です。
一方で、純資産は株主からの調達だったり、会社が過年度に稼いだ利益がどんどんこの純資産のところに積み上がっていくので返済不要です。
したがって、純資産が厚くなればなるほど会社の安全性が上がるという見方が出来ます。
どのようにお金を集めてきて、集めてきたお金をどのような資産に入れ替えて、売上を上げていったのかを表しているので、お金が「右から左へ」と流れていくんですね。
さて、ではクイズです。

日産自動車はどちらでしょう?

大手町 こちらには日産自動車とパーク24という、自動車関連の2社の貸借対照表が並んでいます。
日産自動車は自動車を作って販売する自動車メーカー、パーク24は駐車場を貸し借りしたり、最近だとカーシェアビジネスやレンタカーのビジネスを展開している企業です。
大手町 ともに自動車関連企業なのですが、貸借対照表を見ると結構形が違うんですね。
どちらが自動車メーカーの日産自動車だと思いますか?
徐 私、番組内で自動車産業を結構見ていて、フェラーリやテスラをプレゼンしたので、自信あります!
大手町 それでは一斉に見てみましょう。
安田 おおっ徐さんと私とで答えが違う!

ローンは流動資産?固定資産?

大手町 まず奥井さんから理由をお伺いしてもいいですか?
奥井 車を買う時って現金で払わないで、ローンを組むじゃないですか?
ローンが現金化しづらいと考えれば、固定負債が大きくなるのかなと思いました。
流動負債 :1年以内に返済しなければならない
     (買掛金、短期借入金など)
固定負債 :長期に渡って返済していく
     (社債、長期借入金など)
安田 それってかなりお客さん側の視点じゃない?
会社の視点だと、逆に日産自動車が必要なのは、車を作る工場とそれを作る部品とかで、それを作るには銀行から大量のお金を借りて、、、
奥井 でもこれって資産の方の話だから、、、
徐 資産って会社が持っているものを表していますよね。駐車場とか車とかを持っているのはパーク24の方です。
安田 パーク24の場合って必要なものは土地だけじゃない?日産自動車はその土地に加えて工場も必要だし、部品も必要だし。
徐 でもパーク24ってカーシェアリングなので、車も持っているわけじゃないですか。
まずそもそも、先ほど奥井さんがローンについて言ってたのですが、流動資産が選択肢①に多いのは、お客さんがクレジットカードで払うからじゃないかと思います。ローンで割と儲けるビジネスなので。
奥井 それだと私と答えが一緒ですよね。
徐 いやでも、奥井さんが言ってたように固定資産に入るのではなくて、その債権が流動資産に入るからこそ選択肢①の流動資産が大きいのかと思います。
お客さんがローンをクレジットカードで払うからこそ、その流動資産が生まれるということを表しているのではないですか。
安田 それ、関係なくない?!お客さんがどうやって買うかは全く関係ないと思う。
徐 関係ありますよね!
奥野 この議論がいいんですよね。
大手町 では正解を発表したいと思います。
正解は、①番です!
 やったー!
大手町 ①日産自動車、②パーク24でした。ということで、解説します。
まず、日産自動車の貸借対照表の内訳から見ていきます。これパッと見ると流動資産が多いとなるじゃないですか。
先ほども安田さんがおっしゃっていたように、自動車メーカーは工場があって多くの資産が必要なんじゃないかと思われることが多いのですが、こちらは「販売金融債権」という科目が流動資産の大半を構成しています。
大手町 この販売金融債権とはどのような科目なのかを見ていきましょう。
徐 これはだからローンですよね。
大手町 はい、そうです。例えば、車って一括で購入する人はほぼいないんですよね。
じゃあどうやって購入するのかというと、自動車ローンを組んで分割で払うというのが一般的な車の買い方です。
それで、日産は車を買う人に対してローンでお金を貸すということをやっています。
安田 自社で、ですか?
大手町 はい、自社で金融機能を持っています。
これが販売金融債権、いわゆる貸付に近いような科目として入ってきます。
安田 これってトヨタとかもやっているんですか?
大手町 トヨタなどもやっています。

営業で発生するローンは「流動資産」

奥井 債権やローンが流動資産になるということですか?
大手町 はい、そうです。これとても良い視点で、長期的に貸すローンだったら固定資産になるんじゃないのか、と疑問に思われると思うのですが、営業で発生する科目は流動資産に入るんですよね。
例えば、先ほどの商品を仕入れて売るというような、売る過程で売上債権が発生するのものは全て流動資産(流動性が高い科目)になるんですよね。
大手町 こちら自動車メーカーで一番よくある形で、金融機能を自社で持って、単純に自動車を作って売るだけではなく、売って、その後現金で回収するまでを含めて全部ビジネスの一環で持つというのが非常に多くなっています。
このビジネスが、貸借対照表に反映されています。
そして、こちらが日産自動車の損益計算書です。
大手町 実はこちら、セグメント、つまり事業ごとの業績が載っているんですね。
事業ごとの業績を見ると「販売金融事業」というのでかなり多額に利益を出していることがわかります。
本業の自動車事業よりも利益を出しています。
すなわち、自動車メーカーは商品を売って終わりではなく、売ってからも回収するまで自社内で事業として行うことによって利益を出しているので、単純に自動車を作っているだけではない、というのが貸借対照表から読み取れるんです。
徐 顧客が自動車を購入する際に現金一括払いをしようとすると、「販売金融事業」部分のビジネスがなくなってしまうので、自動車メーカーの営業担当の方々は嫌がる、ということですね。
大手町 出来る限りローンで売りたいというのが自動車メーカー側の意向なんですよね。
一括で売るとこの金利の部分が取れなくなってしまうので、逆に言うと分割払いを勧めて利益を出来るだけ高くしている、というのが決算書から読み取れます。

固定資産が多い、パーク24

大手町 簡単にパーク24の方も解説すると、こちらは日産自動車に比べると固定資産が大きいビジネスとなっています。
大手町 なぜかと言うと、駐車場って土地だけではなく、駐車場の出入り口のバーや代金を払わないと動かないロック装置なども固定資産に入ってくるので、結構多額に固定資産を持っています。
あとは、カーシェアにすごく投資をしているのですが、全ての車を自社で買って保有しているんですよね。そういった全てが固定資産に入ってきます。
パーク24の固定資産の内訳の詳細が上記の通りなのですが、車の運搬具(機械など)をかなり自社で保有しているのがわかるので、車を自社で保有する投資フェーズにいることが読み取れます。
番組本編では、中古品を取り扱う2社(ブックオフグループHD、メルカリ)の貸借対照表の形が示すビジネスモデルの違いや、投資家 奥野氏が投資を検討する際に着目するポイントなども解説しています。
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