(ブルームバーグ): パナソニックの楠見雄規社長はブルームバーグとのインタビューで、今後2年間は各事業で「キャッシュ創出力の強化」に専念し、財務的余力を確保した上で、その後の大型企業買収・合併(M&A)や事業拡大への投資に備えたい考えを明らかにした。楠見氏は24日に社長に就任した。

楠見氏は、トヨタ自動車との合弁による車載電池事業の現場視察で「われわれはまだやるべきことができていない」と感じたと明かし、経費削減などに務める必要性を強調。その上で、2年で改善が進めばM&Aも「何千億円くらいできるだろう」と述べた。買収先候補の事業領域などについては言及しなかった。

同社は4月に米サプライチェーンソフト大手ブルーヨンダーを71億ドル(約7800億円)で買収すると発表した。社長就任に先立ち最高経営責任者(CEO)に就いたばかりの楠見氏もこの大型買収の判断に加わった。買収資金は手元資金35億ドルとブリッジローンで賄った後、将来的に劣後債などに借り換える計画だ。

パナソニック、米ブルーヨンダーの買収で最終合意-約7800億円

パナソニックは2022年4月に持ち株会社制に移行する。7つの社内カンパニーを主に事業会社など8社に再編し、白物家電や空調を手掛けるパナソニック、現場プロセス、デバイス、エナジーの4事業を軸に競争力強化を図る。楠見氏にとって最初の使命は、再編を成功させ、新たな中期経営計画で具体的な成長の道筋を示すこととなる。

CEO就任後の5月27日の会見では、30年までに事業活動に伴う二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする目標を掲げるなど環境対応の強化に意欲を見せた。ブルーヨンダー買収効果の一つとして期待されるサプライチェーンの効率化もCO2排出量の削減につなげる方針だ。

楠見社長は研究開発部門出身で、テレビや車載事業も手掛けてきた。創業者の松下幸之助氏が提唱した「楽土」を「理想の社会」と言う言葉に置き換え、ビジネスでは「環境課題への挑戦を通して、それぞれの事業で役立つ」ことを目標に置く。そこで競争力を付ければ「結果として販売や利益が上がってくる」と語った。

米テスラの要請を受け開発中の電気自動車(EV)向け新型リチウムイオン電池「4680」について楠見氏は、試験的なラインで生産の効率性を実証する段階にあると述べた。量産化に向け試作品の能力などを見極めた上で、「大きな投資」を考えていきたいとしている。

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