[ロンドン 15日 ロイター] - 米金融大手モルガン・スタンレーは、欧州中央銀行(ECB)のデジタル通貨「デジタルユーロ」が導入された場合にはユーロ圏19カ国の銀行にある顧客の預金の8%がデジタルユーロへの流出で消える可能性があるとの試算を示した。

世界の9割の中銀が現在、デジタル通貨の研究に入っている。ECBも動きを加速し、向こう数か月でデジタルユーロについて研究をまとめるとみられている。実際の正式な導入はまだ数年は先の可能性があるが、エコノミストたちは導入の影響の試算を始めている。

重要な問題の1つが、一般消費者向けの銀行口座にある現金をデジタル通貨が吸い上げることになるかどうかだ。

モルガン・スタンレーのアナリストによると、ECBが実質的に管理することになるデジタル財布にユーロ圏の15歳超が全員3000ユーロ(3637ドル)ずつを移したと仮定。これは一部のECB当局者や市場専門家が理論的な上限額としている額だ。

この結果、理論的にはユーロ圏全体の家計や非金融機関の預金総額は8730億ユーロ、比率で8%失われ得るという。

ユーロ圏の銀行の平均的な預貸率は97%から105%に上昇する見通し。ただ、コロナ禍で家計の貯蓄が押し上げられる前の2019年末時点にも預貸率は105%だったことから、ユーロ圏の銀行全体で見れば影響はほとんどないに等しい。

ただ、国の規模が小さい銀行では、特にラトビアとリトアニア、エストニア、スロバキア、スロベニア、ギリシャでは平均より大きな影響が出る可能性がある。そうした国では3000ユーロずつ預金が動くのは総預金の17-30%、家計の総預金では22-51%分の移行に相当するという。ただ、実際には、そうした大規模な預金移行は起きにくいともみられている。