[上海 31日 ロイター] - 人民元は31日、通貨バスケットに対する貿易加重平均ベースで5年ぶりの高値を記録した。当局が行き過ぎた投機をけん制する発言を繰り返しているにもかかわらず元高は進んでおり、国内輸出業者の収益を圧迫している。

中国国家外為管理局(SAFE)の元高官、管涛氏は中国証券報への寄稿で「国内外為市場では最近、周期的な『群衆効果』の兆候がある」との見方を示し、元の先高観は「為替市場の秩序ある機能を阻害するだけでなく、輸出部門の財務負担を増やすことになる」と指摘した。

これより先、中国人民銀行(中央銀行)で調査統計局長を務めた盛松成氏は30日、人民元の対ドル相場の急速な上昇は行き過ぎの可能性があり、持続可能ではないとの認識を示した。新華社のインタビューで述べた。

人民銀行系の金融時報も30日、人民元の対ドル相場下落につながり得る潜在的な要因について警告した。人民銀を含む規制当局は27日、人民銀のホームページに掲載した声明で、外国為替市場の不正操作を厳しく取り締まると表明し、現在の為替政策に変更はないと繰り返した。

人民銀行は31日、人民元の対ドル基準値を3年ぶりの元高水準に設定した。

基準値は1ドル=6.3682元で、2018年5月17日以来の元高水準。前営業日28日の基準値(6.3858元)と比べると、176ポイント(0.28%)の元高。

元高の基準値を受け、人民元は通貨バスケットに対する貿易加重平均ベースでも98.22と、16年3月29日以来の元高水準を記録した。市場では98が天井とみられていた。

スポット市場の元は午前の取引で一時1ドル=6.3611元と、18年5月18日以来の高値を記録した。その後は上げ幅をやや縮めた。

上海の外資系銀行の首席トレーダーは「銀行の自己勘定取引でトレーダーは当局のコメントと姿勢に注目しており、国有銀行の行動も注視している」と説明。

その上で、海外に上場している中国企業が配当金の支払いのためにドルを購入する動きで元の一段の上昇が阻まれる可能性があるとした。

「5月半ばにドルを購入した企業もあるが、このフローはまだ終わっていない。一部の企業は市場を注視し、より好ましい価格で購入しようと待っている」と述べた。