(ブルームバーグ):

米通信事業者AT&Tはメディア事業を分離し、メディア運営会社ディスカバリーと統合するための協議に入っていると、事情を知る複数の関係者が明らかにした。実現すれば巨大エンターテインメント企業が誕生する。AT&Tが850億ドル(現在の為替レートで約9兆3000億円)を投じてメディア資産を獲得したのは約3年前のことで、予想外の動きとなった。

両社は週内にも合意を発表する可能性があると、非公開の情報だとして同関係者が匿名を条件に話した。両社は今も取引の形態について交渉しており、詳細は変更される可能性があるほか、交渉決裂もあり得るという。AT&Tとディスカバリーの担当者はいずれもコメントを控えた。

ダウ・ジョーンズ通信(DJ)は事情に詳しい関係者を引用し、両社が債務も含めAT&Tのメディア資産を500億ドルと評価していると報道。交渉が物別れとなる可能性はまだあるが、17日に合意に至ることもあり得るとしている。ディスカバリーのデービッド・ザスラブ最高経営責任者(CEO)が統合新会社を率いる見込みだともDJは伝えた。

ディスカバリーが築いたリアリティー分野のテレビ帝国と、AT&Tのメディア部門ワーナーメディアの広範な資産の統合が実現すれば、ネットフリックスやウォルト・ディズニーと対抗し得る手ごわい競争相手となる。

今回の動きはAT&Tやベライゾン・コミュニケーションズのような通信会社がメディア運営で採算を取ることの難しさを浮き彫りにする。ワーナーメディアの傘下にはCNNやHBO、カートゥーン・ネットワーク、TBS、TNT、ワーナー・ブラザースが含まれる。

一方、ディスカバリーはHGTV、フード・ネットワーク、TLC、アニマル・プラネットを抱える。

ディスカバリーのクラスA株は今年に入って18%余り上昇。AT&Tは年初来で12%上げている。

AT&Tのジョン・スタンキーCEOは人員削減や不採算資産の売却などの事業再編を進めてきた。また、第5世代(5G)無線ネットワークや光ファイバー網の拡大にも資金を投入してきたほか、HBOの加入者増加に向け映画・テレビ番組制作を強化している。

同社は現在、債務返済のため手元資金を必要としている。同社は一連の買収で債務が膨らみ、債務額は世界の企業で最大級となった。これまでは債務返済は滞っていないものの、最近の周波数帯オークションでの落札で新たに支払いを迫られた。 

原題:AT&T Is Said to Prepare to Merge Media Assets With Discovery (4)、AT&T, Discovery Talks Value Media Assets at $50B With Debt: DJ(抜粋)

(DJの報道を3段落目に追加して更新します)

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