(ブルームバーグ): 独自規格の映画を大型スクリーンで上映するカナダのアイマックスは、同社の技術を採用した作品を上映できる日本国内のスクリーン数を今後3年間で約3倍に拡大することを計画している。

同社のリチャード・ゲルフォンド最高経営責任者(CEO)は22日のインタビューで、新型コロナウイルスの感染拡大の影響があっても日本国内の業績は好調だったことから、現在39カ所あるスクリーン数を100カ所まで増やす予定だと話した。

「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」などアニメ映画の大ヒット作の後押しもあり、昨年4月以降、1スクリーン当たりの平均興行収入で日本は2位のオーストラリアや3位の台湾を上回り、世界で最も高い市場になったという。また、年初からの国内興行収入は全体の約11%に相当する1400万ドル(約15億円)で、中国に次ぐ2位の市場となっていることも明らかにした。

ゲルフォンド氏は、日本ではアイマックス作品の上映が可能なスクリーン数が限られていることやワクチン接種が大きく進展していないことを考慮すると、こうした好況は「素晴らしく、かつ驚異的」と話す。

新型コロナの感染拡大により北米や欧州ではロックダウン(都市封鎖)が導入された。映画館が閉館されず上映を継続できた日本や中国などアジア地域は、同社にとって存在感の大きい市場となっている。

日本ではヒット作に恵まれた。鬼滅の刃が昨年に国内の歴代興行収入記録を塗り替え、アイマックスにも2700万ドル(約29億円)の興行収入をもたらした。ゲルフォンド氏によると今年3月に公開された「シン・エヴァンゲリオン劇場版」や4月公開の「名探偵コナン 緋色の弾丸」も好調なスタートを切っているという。

3度目の緊急事態宣言

アイマックスが日本に期待を寄せる一方で、東京都や大阪府など4都府県を対象に25日から3度目の緊急事態宣言が出された。その結果、アイマックスを導入している映画館の3分の1が5月11日までの閉館を決めた。ゲルフォンド氏はこの閉館は売り上げベースで約半分に相当すると話す。

緊急事態宣言による一時的な休業は「日本市場の今後の見通しや好況には大きくは影響しない」としているものの、今後上映スケジュールが変更されることはあり得るとした。国内ではTOHOシネマズ、イオンシネマ、ユナイテッド・シネマなどがアイマックスのスクリーンを取り入れている。

緊急事態宣言入り直前の23日に「るろうに剣心 最終章 The Final」が公開となり、先週末の興行収入は約45万ドルとなった。今後は5月14日に「ゴジラVSコング」、8月6日に「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」などのアイマックス作品の公開が予定されている。

米ウェドブッシュ証券のアナリスト、アリシア・リース氏らはリポートで「ここ数カ月間、家庭外での娯楽に対する需要が中国や日本、その他のアジア地域で高まったことで、アイマックスのマーケットシェアが大幅に拡大した」と指摘。同様の需要は欧米でもあり、上映スケジュールが通常通りの状態に戻れば、市場シェアの拡大につながるとの見解を示した。

アイマックスは29日に1-3月期の決算の発表を予定している。

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