2021/5/11

動画マーケの“勝ちパターン”。インハウスでPDCAを回せ!

NewsPicks BrandDesign ChiefEditor / NewsPicksパブリッシング 編集者
 あらゆる業種の企業マーケティング担当者が考えていること。
 それは「いかに低コストで効果的にユーザーを獲得するか」である。 
 そのうえでテキストや静止画以上に説明量を盛り込める“動画”というフォーマットで勝ちパターンを見出すことは、5Gに突入するこれからの未来を攻略することにもつながる。
 事業会社や広告代理店それぞれは、日々どのように動画を使いこなしているのか。
 配信面に最適化されたマーケティング動画を簡単に低予算で作成できるツール・リチカ クラウドスタジオを活用する、各担当者に話を聞いた。
INDEX
  • Case1.ベネッセのデータ利活用編
  • Case2.アナグラムの動画広告運用編
  • Case3.セブン銀行のSNS運用編

Case1.ベネッセのデータ利活用編

株式会社ベネッセコーポレーションでは、社内横断データを利活用するため、広告運用のインハウス化を進めている。さまざまな年齢・性別を対象とした商材を取り扱うなか、ターゲットごとに異なる動画クリエイティブを、現場担当者が制作する。内部制作で質の高い動画広告運用を推進するための仕組みについて、データマーケティングに携わる上野 淳次氏に聞いた。
──なぜ動画広告の運用だけではなく、クリエイティブ制作まで内製していく方針を取ったのでしょうか。
 ベネッセでは、一人ひとりのニーズに合うようなマーケティングスタイルを意識しています。
 具体的には、あらゆるライフステージのお客様を対象に、さまざまなサービスのキャンペーンを実施しています。
 顧客基盤を統合し、居住地や家族構成、飼っているペットなどのデータを活用しながら、特定のプロフィールをもつお客様に対し、最適なメッセージを打ちだしています。
 しかし、お客様のデータを厳重に管理しながら広告配信をしていくからこそ、情報セキュリティの観点から、クリエイティブを社外に委託することは難しい。
 また、仮にセキュリティ面をクリアして外部委託が実現したとしても、伝えたいメッセージ通りのクリエイティブを外部にお任せするには、キャンペーンのセグメントがとても細かいので、コミュニケーションコストが多く発生してしまいます。
 そこで、運用者自身が出面などを考えてマーケティング設計をしながら、セグメントに合わせた動画クリエイティブを量産したい。そこでリチカ クラウドスタジオを導入し、社内で動画を制作する仕組みを整えているところです。
──動画というフォーマットに注力した経緯について教えてください。
 5Gの到来を控えるなか、動画でのアプローチはより主軸になっていくと予想しています。パフォーマンス改善を行いながらクリエイティブを内部制作へとシフトしていく上で、動画広告の“勝ちパターン”を社内にためていく必要があると考えました。
 知見を得るためには「こういったユーザーにはこういったクリエイティブを訴求すると効果が高い」という検証を重ねる必要があります。しかも、扱う商材や関わる部門も多いからこそ、PDCAをクイックに回しながら、動画を作成しなければならない。
 多くのメンバーがリチカ クラウドスタジオを利用することで、内部制作でも クオリティが担保された動画が生まれるような仕組みが作れていることは、ツールを導入したメリットです。
 また、今までは静止画やGIFバナーを活用していたのですが、動画や動画バナー(一部に動きのある静止画バナー)に変えたところ、一部のクリエイティブではCPA(獲得コスト)が3分の1にまで下がった実績もあります。
アプリ「まいにちのたまひよ」の動画広告
──3分の1はかなり高い効果ですね。
 ポイントを絞りながらABテストをし、クリエイティブをいかにブラッシュアップさせていくか、というPDCAの回し方をリチカさんにレクチャーいただいたんです。その恩恵がとても大きいと思います。
 特にリチカ クラウドスタジオを導入してから、広告だけではなく、メディアのコンテンツを動画で作る場合にはどうしたらいいか、などのさまざまなニーズが各事業部から生まれました。知見をためながら、現場のレベルもしっかりと底上げされていく感覚はあります。
 リチカさんのお力添えもあって、今はクリエイティブに明るくないメンバーでも、自分たちで考えながらクリエイティブを改善させ、動画を量産できる現場状況にはなっています。今後も動画制作のインハウス化を根付かせていこうと思います。

Case2.アナグラムの動画広告運用編

アナグラム株式会社では、総勢60名余りの運用型広告コンサルタントが、動画広告の提案および制作を積極的に行っている。広告主のマーケティング支援を行う企業が考える動画広告の“勝ちパターン”とは。そしてどういった訴求を行う際、動画広告という手段がマッチするのだろうか。広告運用コンサルティングを行う松尾耕介氏に話を聞いた。
──御社ではどういったケースで動画広告を提案するのでしょうか?
 検索広告などの「見込み客にアプローチしやすい施策」をある程度やりきった段階でご提案することが多いですね。動画広告は、さらにリーチを伸ばしたり配信面を広げるのに効果的なんです。
 もちろん、テキストや静止画を利用したリスティング広告の方が、ありものの素材を流用しやすく、配信は簡単です。
 一方で動画フォーマットは、アテンションを引きやすく、ひとつの広告での情報密度が高い点が優れています。そのため、テキストやバナー広告だと反応してくれないユーザーでも、適切な構成の動画を用いれば、アクションしてもらえる可能性が高まります。
 こういった特徴を踏まえ、見込み顧客との接点を増やしてさらに獲得数を伸ばしていきたい段階で動画広告をご提案することが多いのです。
 とはいえ、いざ広告主様の意向をヒアリングしてみると、動画広告に対し消極的なスタンスの方も少なくありません。
──クライアントからは、どういった反応があるのでしょう?
「素材が用意できない」という広告主様もいれば「過去に挑戦してみたけど失敗したから……」という広告主様もいらっしゃいますね。
──「動画制作はコストがかかる」「費用対効果で見ると割に合わない」という先入観もありそうですね。
 そうですね。そういった事情もあってか、ウェブマーケティング全体に割くコスト配分の観点から、あえてウェブ広告用の動画を作成されていない広告主様も多いように感じます。
 もしくはテレビCMの素材をそのまま用いた出稿をご相談いただくこともあります。ただ、テレビCM用の動画をそのままコンバージョン獲得向けのウェブ広告に投入しても、期待ほどのパフォーマンスが得られないことがほとんどです。
 というのも構成の面において、テレビCMのセオリーとウェブ動画のセオリーはまったく異なるからです。
 テレビCMは15秒の尺のうち、最後の5秒に最も盛り上がる要素を盛り込むことが多いそうですが、ウェブ広告用の動画の成功パターンは逆。ウェブでは、はじめの5秒でユーザーの心を掴まないとスキップされてしまいます。
 つまり、ウェブで動画広告の投資効率を上げていくためには、ウェブ広告専用の動画を別作成すべきだと考えています。そのような場合、リチカ クラウドスタジオで制作したクリエイティブでの動画広告の出稿をご提案しています。
──リチカ クラウドスタジオを広告運用で活用することのメリットを教えてください。
 成果を出すための検証を重ねやすい点です。
 例えばテキスト広告の場合は、広告運用者自身が広告のテキストを作成し、テストし、勝ちパターンを探ることは容易にできます。
 しかし動画の場合、テキスト広告ほどには「表現や訴求軸を変えて検証する」ことが容易ではありません。具体的には制作費や制作のスピード感がボトルネックになって、高速でPDCAを回すことが難しい。
 その点、リチカ クラウドスタジオでは定額で何パターンでも動画を作成できるため、制作費の面での制約が軽くなります。スピード感に関しても、大げさでなくテキスト広告のPDCAと大差ない感覚で実行できます。
 また、配信面やメディアに応じたテンプレートを選んで制作できるので、完成した動画クリエイティブがメディアの入稿規定から外れて入稿できないこともありません。最近流行りの縦長動画のテンプレートが充実しているのも、個人的にはかなりうれしいポイントですね。

Case3.セブン銀行のSNS運用編

セブン銀行ではTwitterを活用し、顧客とのコミュニケーション接点を生み出している。日々の投稿では動画クリエイティブを積極的に活用し、サービスの認知向上やブランドイメージの向上を図る。なぜ静止画やテキストの表現のみならず、動画クリエイティブによるコミュニケーションを選択するのだろうか。Twitter運用を担当する堀越 早織氏に話を聞いた。
──そもそもなぜSNSでの発信に注力するようになったのでしょうか?
 これまではTVCMや駅等の広告など、どちらかというとマス広告がメインでした。SNS上でのアプローチは、昨年まであまりできていなかった経緯があります。
 金融はお客さまと長いスパンのお付き合いが前提となるサービスです。近年は非金融業界から金融業界へ参入する企業が増えたことで、金融業界の中でもCX(顧客体験)に配慮したアプローチが重要という考えが広がってきていますが、まさにそうだと思います。
 コロナ禍によってデジタルの接点のインパクトも増していますし、多くの人が集まるデジタルチャネルに露出していないことの機会損失は、社内でも課題に上がっていました。そこでまずはTwitterでの継続的な常時発信にチャレンジすることになりました。
──顧客とのコミュニケーションツールとして、Twitterをどのように活用されているのでしょうか?
 取り組みを開始する前はグループ会社のアカウントや、他の金融系企業のアカウント、有名な企業アカウントなどをリサーチ。どういう企業アカウントのタイプがあり、どういった方向性を目指すかを試行錯誤しながら、現在までに200件ほどの投稿を行ってきました。
 セブン銀行も多くのお客さまが日常でお使いになるサービスです。日常に溶け込むような、親しみやすいブランドイメージを生み出すための投稿を行うほか、新型ATMのご紹介や、よくあるご質問のご案内、ATMの使い方やチャージの仕方についての発信などを行いました。
「新型ATMに関するクイズ」についてのTwitter投稿例
「現金チャージのすすめ」についてのTwitter投稿例
「現金チャージのすすめ」についてのTwitter投稿例
 実際にやってみると、お客さまからポジティブな反応をいただけることが多かったです。特にお客さまが抱えている疑問に対し即座にリプライを送るといったアクティブなサポートの価値は、SNSならではの魅力だと思っています。
 また、見てくださる方や反応が多かったのは、フィッシング詐欺の注意喚起を行う投稿です。
 実際に「不審なメッセージが来た」と投稿されている方を発見し、弊社からDMでやり取りをさせていただきました。そしてフィッシングメールの本文画像等をご提供いただき、弊社から投稿することで、迅速に注意喚起ができました。
 こういった注意喚起の際も、動画や画像の有無で見られる回数の桁数が違うことを実感しました。
──なぜ動画クリエイティブを用いた発信方法を取り入れたのでしょうか。
 SNS上で「セブン銀行」についてエゴサーチをすると、スマホ決済や電子マネーへのチャージ方法などは周知されていないことに気づきました。弊社のサービスや使い方を知ってもらう余地はまだまだあると、取り組みを始める前から感じていました。
 その上でATMの操作方法を紹介するには、動画の方が説明はスムーズ。実際、動画をつけた場合、1投稿あたりの平均エンゲージメント数が、テキストのみの投稿の2倍になりました。
 ただSNSではクリエイティブの消費速度も速いため、一つ一つのコンテンツに大きな予算をかけることはできません。そこで短時間で動画を制作できるリチカ クラウドスタジオを活用しています。
──リチカ クラウドスタジオのメリットはなんでしょうか。
 SNSの運用は100点を目指しにいくと時間がかかりすぎて運用が回らず破綻してしまいます。かといって40〜50点だとメッセージは伝わりにくい。限られた時間で、いかに75点まで到達できるかが重要になります。
 弊社のように活用できるクリエイティブがもともと少ない会社であれば、フリー素材やデザインサイトなどを活用し「省エネ」しながら、まずは投稿を日々作成していくことが重要です。リチカ クラウドスタジオは動画テンプレートの量が多く、色やBGMなどが変えられることで「いつも同じ感じの動画」にならないのはありがたいです。
──実際に、社内ではTwitter運用に対しどういった反応が寄せられましたか?
 実はセブン銀行の投稿に対するお客さまの反応等を、20〜30個ほど毎週ピックアップし、社内にシェアしています。
 良い反応・悪い反応をシェアしていくと、社内拡散が起き、徐々に注目されるようになりました。半年以上コツコツと続けていくなかで、投稿ネタの持ち込みや、キャンペーン時に短尺動画を作成してほしい、といった社内からの依頼も来るようになりました。
 低コストでコンテンツを作ったり、認知向上を行ったりする手段として、動画のクリエイティブが認知されたのは大きかったと思います。もしテキストの投稿ばかりだったら、社内からも「なんか辛うじてやってるな」程度の印象だったかもしれません(笑)。
 今は私がハブとなってTwitterを管理していますが、今後は部門ごとにリチカ クラウドスタジオを使って一通りのクリエイティブが作れて、管理はされつつも、パラレルに発信できるようなサイクルが回ることが、一番望ましいと思っています。