[ベルリン 6日 ロイター] - ドイツとフランスは6日、イエレン米財務長官が主導する法人税の最低税率設定への取り組みを歓迎するとし、140以上の国による合意が実現可能という見方を示した。一方、法人税率の低いアイルランドは最低税率設定による経済への影響に懸念を表明した。

ドイツのショルツ財務相は「この法人税に関する取り組みが世界的な税率引き下げ競争に終止符を打つことを期待している」と表明。また、国境を越えて事業を展開する巨大IT企業への課税方法に関し、新たなルールを合意に盛り込む必要があると主張した。

イエレン米財務長官は5日、20カ国・地域(G20)に対し法人税に世界的な最低税率を設定することで合意するよう働き掛けていると明らかにした。バイデン政権は、多国籍企業の海外収益に課す最低税率を現在の10.5%から21%に引き上げる案を検討している。

フランスのルメール経済・財務相は「国際課税に関する世界的な合意は今や手の届くところにあり、この歴史的な機会を捉えなければならない」と訴えた。

巨大IT企業の国際的な台頭を踏まえ、経済協力開発機構(OECD)は昨年、法人税の低い国に利益を移して課税を逃れる多国籍企業に対する国際課税ルールの改革案を発表。協議には140近い国・地域が参加し、今年半ばの決着を目指している。

米国が提案している法人税最低税率はOECDで検討されてきた税率(12.5%前後)よりも高い。アイルランドの法人税率は12.5%だ。

7日のG20財務相会合で国際課税を巡り、どのような進展が期待できるかは不明。

ロイターが今週初めに入手した共同声明草案は、G20が今年半ばの合意を引き続き目指し、協力を続けていく方針を表明するにとどまり、結論のない内容となっている。

アイルランドのドナフー財務相は、海外からの投資を獲得するために低い法人税率を導入した同国のような経済規模の大きくない国が世界的な最低税率導入で受ける影響に懸念を表明。

その上で、新型コロナウイルス流行の影響で、世界の経済大国がいかに税収を増やすかに目を向けるようになり、税制改革の動きに拍車が掛かったことには理解を示した。

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会の報道官は、イエレン氏の提案を支持するとしながらも、税率についてはOECDの枠組みの中で決定されるべきと指摘。「デジタル企業を含め全ての企業が公正な税金を正当な場所で確実に支払うよう、引き続き尽力する」と述べた。

国際通貨基金(IMF)のゴピナート主任エコノミストは、企業収益に対する世界的な最低税率導入はIMFが長年望んでいたもので、大いに支持するとした。

*アイルランドの反応など追加しました