(ブルームバーグ): スイスの銀行クレディ・スイス・グループは、アルケゴス・キャピタル・マネジメントのポジション破綻で生じた損失が世界の投資銀行の中でも最大級とみられる。アルケゴスに関する問題は1-3月(第1四半期)の赤字と複数の幹部更迭につながった。

同行は6日、アルケゴスに絡み44億スイス・フラン(約5200億円)の減損を1-3月に計上することと、減配や自社株買い停止を発表。投資銀行部門トップと最高リスク責任者を含む幹部数人の更迭も明らかにした。

元ヘッジファンド運用者ビル・フアン氏のファミリーオフィスであるアルケゴスに、高レバレッジの賭けを容認したのはクレディ・スイスだけではなかったが、他行は打撃を抑えるためにいち早くポジション解消に動いた。金融ベンチャー、グリーンシル・キャピタルのファンド問題に続く不手際で、トマス・ゴットシュタイン最高経営責任者(CEO)のリスク管理が問われている。

同CEOは6日の発表文で、「われわれは大切な教訓」を得るだろうとし、アルケゴス関連の損失は「容認できない」とコメントした。

事情に詳しい関係者によると、クレディ・スイスは今週のブロック取引で約23億ドル(約2540億円)相当の株式を売却したことでアルケゴス関連のエクスポージャーの大半を解消したが、この取引と残りのポジションの価格変動による影響は4-6月(第2四半期)に計上される。1-3月(第1四半期)は9億スイス・フランの税引き前赤字になる。

クレディ・スイス、アルケゴス関連で4-6月期に一段の影響も

先月のグリーンシル・キャピタル破綻からの影響については今後さらに説明する予定。同行はグリーンシルとともに運営していた100億ドル(約1兆1000億円)相当のファンドからの損失を顧客に転嫁する方向に傾いていると、事情に詳しい関係者が明らかにした。アナリストは同問題で複数年にわたる訴訟コストを予想している。クレディ・スイスはグリーンシルファンドについて「数日内に」最新状況を説明するとしている。

クレディ・スイス、グリーンシルのファンド関連損失を顧客に転嫁も

6日の発表資料によると投資銀行部門トップのブライアン・チン氏と最高リスク責任者(CRO)のララ・ワーナー氏は退社する。

グリーンシルに関しては先に、資産運用部門責任者のエリック・バーベル氏を更迭している。5日のスタッフ向け文書によると、株式トレーディング責任者のポール・ガリエット氏を含む少なくとも5人も退社する。

チン氏の後任には、元バンク・オブ・アメリカ(BofA)幹部で昨年10月にクレディ・スイスに加わったクリスチャン・マイスナー氏が来月就任する。リスク責任者はワーナー氏の前任だったヨアヒム・オクスリン氏が暫定的に復帰し引き継ぐ。

2020年の配当は1株当たり0.1フランと従来予定の約0.29フランから引き下げ、自社株買い戻しは普通株式等ティア1(CET1)比率が目標水準を回復するまで停止する。1-3月はCET1比率12%を見込んでいる。上期の目標は12.5%以上だった。

ウルス・ローナー会長は20年の報酬150万フランを辞退するほか、取締役の20年賞与も支払わない。

原題:Credit Suisse Takes $4.7 Billion Archegos Hit, Cuts Dividend (1)(抜粋)

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