(ブルームバーグ): 国際通貨基金(IMF)は米金融当局が予想外に引き締めを実施すれば、金利上昇と新興国市場からの資金流出を招く恐れがあると指摘し、中央銀行には市場との明確なコミュニケーションが必要だと強調した。

IMFは世界経済見通し(WEO)の分析部分で、米国の市場金利上昇は今のところ、経済見通しと新型コロナウイルスのワクチンに関する明るいニュースが原動力になっているとの認識を示した。この明るいニュースは新興国市場の大半で投資資金の流入とドル建て債券のスプレッド縮小につながる傾向があるとした。

米金融当局は米経済が雇用の最大化を達成し、インフレ率が当面の間、目標の2%を上回る軌道に乗るまで、事実上のゼロ金利政策を維持する方針を示している。しかし、IMFのエコノミスト、フィリップ・エングラー、ロベルト・ピアッツァ、ゲーレン・シャーの3氏は関連ブログで、インフレ懸念が強まったとの認識を先進国の中銀が突然表明すれば、2013年の「テーパータントラム(市場のかんしゃく)」のように金融状況が想定外に引き締まる可能性があると記述した。

3氏は米連邦公開市場委員会(FOMC)の定例会合で金利が1ポイント引き上げられた場合、平均的な新興国市場の長期金利は3分の1ポイント上昇すると分析。格付けがもっと低く、投機的等級の信用格付けの国は3分の2ポイントの上昇につながると予想した。

IMFは新興国市場へのセンチメントを悪化させないよう、先進国の中銀はシナリオに応じて将来の金融政策を巡って明確で透明なコミュニケーションを取ることが可能だと指摘。利上げの前提条件に関する米金融当局のガイダンスを例に挙げた。その上で、米金融当局が将来のシナリオに関して一段のガイダンスを示せば有益になるとの認識を示した。

IMFは6日にWEOの予測部分を公表する。

原題:IMF Says Fed Surprises Can Trigger Emerging-Market Outflows(抜粋)

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