[ソウル 5日 ロイター] - 韓国のLG電子は5日、赤字続きのスマートフォン事業から撤退すると発表した。売却を検討したが協議が不調に終わっていた。スマホ大手で完全撤退を決めたのは同社が初めて。

スマホ事業は6年近く赤字が続いており、累積赤字は約45億ドルに膨らんでいた。競争の激しいスマホ事業からの撤退で今後は電気自動車(EV)向け部品やスマート家電など成長が見込める分野へ注力する。

LG電子はスマホ市場に早期に参入し、超広角カメラなどの技術革新をもたらした。2013年には韓国のサムスン電子と米アップルに続く世界第3位の地位に躍進した。

しかしその後は、旗艦モデルでハードとソフト両方で問題が発生し、ソフトウエアのアップデートも遅かったために人気低下を招いた。アナリストは中国の競合社に比べてマーケティングに関する専門知識の不足も指摘してきた。世界のスマホ市場のシェアは約2%にとどまっている。

ただ、米国を含む北米のシェアは10%で3位。撤退後はサムスンとアップルがLGの顧客を総取りするとみられる。

Hi投資証券のアナリストは「LGは米国で超低価格というより中間価格帯のモデルに照準を絞っていたため、アップルよりも同価格帯の商品が多いサムスンがLGの顧客獲得に優位な立場にあるだろう」と分析した。

他の有名携帯電話ブランドではフィンランドのノキア、台湾のHTC(宏達国際電子)、カナダのブラックベリーもかつての大きなシェアを失っているが、完全撤退はしていない。

事情に詳しい関係筋はこれまでに、LGがスマホ事業の一部売却に向けてベトナム複合企業のビングループと進めていた協議は、条件を巡る意見の違いから決裂したと話していた。

同社は北米に加え、中南米でもシェア5位と存在感を発揮している。同地域で低価格および中間価格帯の商品を提供するサムスンや中国のOPPO(オッポ)、Vivo(ビボ)、小米(シャオミ)などのブランドがLGの撤退で恩恵を受けるとアナリストは予想する。

LG電子の5部門の中でスマホ部門は最小で、売上高全体に占める割合は約7%。7月末までに同部門を閉鎖する。韓国のスマホ部門の人員はLGの他の事業部や関連会社に異動する。海外の人員については現地で決定する。

LGの電話会見に出席したアナリストらは、同社からは4Gと5G(第4、5世代移動通信システム)の中核技術の特許や、研究開発の中心的な人材を維持し、6Gの通信技術開発を継続するとの説明があったと明かした。将来的にそのような知的財産のライセンス(使用許可)契約を他社と結ぶかどうかについては決めていないという。

*内容を追加しました。