2021/3/21

【落合陽一・千原ジュニア】コロナ禍の卒業生たちへ贈る「祝辞」

2020年、未曾有のパンデミックに社会や経済は混乱に陥り、これまで当たり前だった常識が急速なスピードで変容しました。そんななか、大学を卒業する学生や社会に挑戦する人たちへ、5人の著名人から「祝辞」を贈ります。

落合陽一「今すぐNewsPicksを解約しましょう」

卒業生の皆さん、おめでとうございます。今日は僕からはなむけの言葉を贈りたいのですが、まずは皆さんにお願いがあります。
今すぐNewsPicksを解約しましょう。
年度末なので登録しているサブスクリプションサービスの更新を始め、身の回りのあらゆるものを見直す時期です。
皆さんは普段、何も気にせずコンビニに行ったり、アマゾンで買い物をしたり、グーグルやアップルを利用したり、あらゆるサービスのなかで生きていると思います。もちろんどれも非常に素晴らしいですし、NewsPicksもそのひとつです。
でも、それらの当たり前に使っているモノやサービスを一度リセットして見直してみる機会って、学校を卒業するときや会社を辞めるときくらいではないでしょうか。
そのうえで、自分にとって本当に必要な情報を取捨選択してみる。そんなタイミングは、実はそんなに多くはありません。
この機にいろんなものをリセットして、考え、必要であればまた使ってみたり、サービス登録をし直してみたりしてみるのも、悪くないと思います。
僕は大学で研究者をしています。大学という場所は、学問だけでなく、人類の多様性や文化への理解を深めていくことに価値基準があります。
知を蓄積し、社会にもたらす批評性や文化の情勢を学び、世の中になびかない独自の価値観をいかに生み出していけるか。そんなことを考えます。
つまり、大学は教科書に載っているモノを教える場所ではなく、実際に教科書をつくっていくような場所。例えば、教科書に載っているモノを学ぶことが「勉強」だとしたら、教科書に1ページ足す作業が「研究」です。こうした、大学にある「知の独自性」はとてもおもしろい。そう思いながら、僕は大学で過ごしています。
そして、大学ではない場所には、さらなる多様な知能が存在します。
教科書に載らない、研究論文にならないモノにも価値があるし、映画やエンタメ、他愛ない雑談にだって優劣はなく、あらゆる価値が存在する。
そのなかで、自分は何が好きで何が嫌いか、何に価値をおくかを考えるのは、とても大切なこと。
大学のなかで学生として持っていた基準と、社会人になったときの基準はおそらく変わってきます。その変わっていく過程で、自分が本当に好きなものはなんだろう? 何に価値を見いだすのだろう? ということを考え直し続けるのもまた、大事なことだと思います。
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千原ジュニア「この時代に選ばれし人たちへ」

この大変な時期に社会へ出られる皆さんに、何か1つでもポケットに入れてもらえるようなお話ができればと思い、やって参りました。
今までのノウハウが一切通用せず、何が正解かわからない状況です。そのなかで社会に出られるわけですから、不安も大きいと思います。
でも逆に言うと、こんなタイミングで卒業し社会に出られるのは、この時代に生まれ落ちたからこそ。むしろ「選ばれし人間」なんだと考えることもできます。
これは僕の持論なのですが、へこんだり落ち込んだりしているときにこそ、見える景色がある。しゃがめばしゃがむほど、そのあと大きく飛べるんじゃないかって思うんです。
僕も、引きこもりになったり大事故にあったりと、いろいろな経験をしてきましたが、人生を振り返って無駄だったものは一切ない。どれも何かの意味があるし、すべてはチャンスなんじゃないかと思うんです。
バイク事故とその後の入院や手術は、本当に地獄の日々でした。
痛いし辛いし、未来も見えない。でも、家族や先輩、事務所、いろんな人たちの愛情を感じました。事故に遭う前より、人間として少しは成長したかなと思います。
若いうちは、目の前で起きている「シーン」だけで物事を見がちです。でも、そこから先にある「ストーリー」の視点で物事を見ると、「あの時期が、あの経験があったからこそ今がある」と思えるようになることもあるんじゃないかな。
例えば今、中学生でいじめに遭っている人がいたとして、これがこの先何年続くんだろうと思うかもしれない。いじめは本当に辛いです。でも、1年たてばクラスが変わるでしょうし、3年たてば学校も変わるでしょう。少しずつ環境は変わっていくだろうし、その先にまだまだあなたの知らない楽しいこと、まだ出会っていない素敵な人たちがいっぱいいるんだと言いたい。
僕はひねくれているので、「座右の銘を教えてください」と言われると、言葉で答えるのが嫌だなって思うんです。
だから、「!」と「?」と、書くようにしています。
これは「発見」と「疑い」ということですね。溢れかえる情報を鵜呑みにせずに、まずは疑ってみて、そのなかでいかに真実を見つけ出すか。
ニュートンの前で初めてリンゴが落ちたんじゃない。それまで誰の前にもリンゴは落ちていたんですよね。その当たり前なことに疑いを持って、発見をしたのが、ニュートンだった。
小さなことでも疑って、何かを発見する。それが新しくて素敵な「シーン」を生み出し、ひいては楽しい「ストーリー」になっていく。
たくさんの大人たちが、いろんなことを言ってくると思います。それらにすべて「?」を浮かべて、楽しくて笑えるストーリーを作っていただきたい。
僕ももちろん、まだまだストーリーの途中です。どこかのシーンでご一緒することがあるかもしれません。その時はぜひ、よろしくお願いします。
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三浦瑠麗「自分を愛し、他者に思いやりを持つ」

皆さん、ご卒業おめでとうございます。これから社会へ出ていくにあたり、大学生活とはまったく違う世界が開けていくと思います。
皆さんがこれから踏み出していくのは「人から必要とされる」世界です。
これまでは、周囲の協力や庇護を必要とする「子供の時代」でした。そこから抜け出して、「人から必要とされる」世界へ。最初は職場でのジョブトレーニングなど、教育される側になることも多いので、「必要とされる」実感がわかないかもしれません。でも、どのような進路になっても、人間が生きていくにあたっては「人から必要とされる」こと、それを目指して生きていくことが大切になります。
新社会人となる皆さんには、ぜひ「自己実現」を目指してほしいなと思います。
自己実現をするためには、どうしたらいいのか? そう考える前に、まずは自分がどういう人生を望み、どういう風に「周りから必要とされたいか」を考えることが大切です。そのためにも、「自我」を適切に育てる必要があります。
最初に自我が生じるのは、反抗期です。
ともすれば、周囲から見るとワガママとも受け取られかねないものが、自我の最初の芽です。自分の思いや気持ちを大事にし、自分を可愛がらなければ自我は育ちません。一方で、自分だけを大事にしていては単なる他者の拒絶となり、確固たる自我は育ちません。自分の気に入らない他者を拒絶することで心の安定を得ても、単なるワガママで終わってしまう。
自我を大切にしながら他者を許容するには、どうすればいいのか──まずは自分に厳しくあることで、他者を含めた周りに対する観察眼を養うこと。そして、自分を愛することで、他者に思いやりを持てる人間になること。これを私自身、40年の人生において心がけてきました。
同時に、私たちが生きる現代は、人と人がつながりやすくなり、プライバシー保護の問題もあります。リアルとオンラインのすみ分けが難しく、人から必要とされたいと思うがために、過剰に人とつながってしまったり、頻繁な承認なしでは生きていけなくなったり。
そうしてインターネットに依存し過ぎたり、人目に晒されすぎたりすると、必ず自分のリアルな生活や体調に支障が生じます。
でも、どんなに大変な状況においても、自分のなかで「オフ」する機能を持っていれば大丈夫。なんとかなります。
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前田裕二「無駄な時間に意味がある」

今日は、コロナ禍で僕が気づいたことについて、「時間」というテーマで皆さんにお話ししたいと思います。
コロナ禍では誰しも、人生において大事なことや、時間の使い方など、さまざまに考えるきっかけを得たと思います。そのなかで僕が目をつけたのが「無駄な時間」です。
コロナ以前まで僕は、時間は命であり、1秒たりとも無駄にせず効率的に過ごさなければいけないと思っていました。いかに生産的に、1秒あたりの自分の費用対効果を高めるかと考えていた。
でも本当は、家族や友達と無駄な話をしている時間がとても貴重だったんだと、コロナでそれらの時間が奪われたことをきっかけに気づいた。時間は有限であるからこそ、愛している仲間や家族と無駄な時間を過ごすことが大事なんだと、最近は感じるようになりました。
そんな話について、大好きな作品のエピソードを引用しながらお伝えしたいと思います。知っている方も多いと思いますが、『星の王子さま』です。
ある星に住む王子さまがバラを育てるのですが、だんだんと大きく美しくなったバラは徐々にワガママになっていきます。雨が降れば雨よけを持ってきてほしい、咳をすれば寒いから暖かくしてほしいと、美しいだけにトゲがあるバラとなる。王子は疲れてしまい、バラに別れを告げます。バラは王子が好きなので謝りますが、時既に遅し、王子は別の星へと去っていきます。
そして6つの星を経て地球へたどり着きます。砂漠を歩いているとバラ園にたどり着き、王子はそこで大きな衝撃を受けます。なぜなら、自分が種から育てて、この世に1本しかないと思っていたバラが、地球にはたくさんあったからです。
落ち込んでうなだれていると、人生経験が豊富なキツネが通りがかり、王子に声をかけます。落ち込んじゃって、どうしたの? と。王子は、自分の星でたったひとつのバラを大事に育てていたけど、地球にはたくさんあることを知ってショックを受けたこと、今まで自分がバラに費やしてきた努力は何だったのだろう…と、落ち込む理由をキツネに話します。
するとキツネは言います。それは本当に同じバラなのだろうか? と。
王子はもう一度バラ園へ戻り、いろんなバラを見て、気づきます。自分があの星で一緒に過ごしたバラは、あのとき唯一の時間をともに過ごした特別なバラなのだと。キツネは、費やした無駄な時間の分だけ、バラは王子にとって大事なものになるんだと教えてくれたんです。
まさに僕は、愛とか絆は、こういう無駄な時間を経て得るものなんだと気付かされました。今まで効率だけを追いかけて仕事をしていた自分が、コロナ禍で気付かされたもっとも重要なこと。それこそが「無駄な時間」の尊さだったんです。
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最終回「登壇者:堀江貴文」
3月21日(日)21時〜 配信予定
番組視聴はこちら(タップで動画ルームへ遷移します)