(ブルームバーグ):

日本銀行の黒田東彦総裁は19日、ゼロ%程度に誘導する長期金利(10年物国債金利)の変動許容幅を上下共に0.25%ポイント程度と明記したことについて、さらに拡大する考えはないとの見解を示した。金融政策決定会合後の記者会見で話した。

黒田総裁は、従来の「プラスマイナス0.1%の倍程度」との説明を明確化しただけで「変動幅を拡大したわけではない」と説明。「変動幅を拡大するという考えは今は持っていない」とした上で、超長期債の金利を上げるために「イールドカーブを立てるように何かするということも全く考えていない」と述べた。

市場では黒田総裁のこれまでの発言から、上下0.2%程度がレンジと受け止められていた。

変動幅を巡っては、黒田総裁が5日の国会答弁で「拡大する必要があるとは考えていない」と発言。8日には雨宮正佳副総裁が「緩和効果が損なわれない範囲内で金利はもっと上下に動いてもよい」と述べ、正副総裁発言の温度差に市場が混乱する一幕があった。

国会発言について黒田総裁は、変動幅を「拡大する趣旨ではない」と説明。雨宮発言とも「矛盾したことを言っているとは考えていない」との認識を示した。

特定年限の国債を固定金利で無制限に購入する指し値オペを強化した連続指し値オペの導入に関しては、「例えば1週間やりますというようなことで、より強力に上方への移行を阻止する」と説明。長期金利の大幅上昇で金融政策の効果が影響を受けるのは「絶対に避けなければならない」と述べた。

会見で再三にわたって強調されたのが長短金利の引き下げ余地だ。会合では、マイナス金利深掘りによる金融機関収益への影響を和らげるため、短期政策金利と連動した「貸出促進付利制度」の創設を決定した。

黒田総裁は、マイナス金利の深掘りなど長短金利を引き下げる際に「インセンティブを強化して貸し出しを進めてもらう」措置であると説明。同制度は「マイナス金利政策と整合的であり、政策をさらに強化しうる」とし、必要であればマイナス金利の深掘りも躊躇(ちゅうちょ)しないと言明した。

マイナス金利について「イールドカーブ全体を低位にして経済を支え、2%の物価安定目標を早期実現するための不可欠の要素だ」と語った。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は、「マイナス金利の深掘りも技術的に可能にする仕組みを今回打ち出したのが想定外だった」と指摘。ただ「現状は一段のマイナス金利の深掘りの必然性はなく、緩和の可能性というのりしろは作ったと言うことはアピールするもの」との見方を示した。 

(総裁の発言やエコノミストコメントを追加します)

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