2021/3/18

最先端「ディープフェイク技術」がもたらす明と暗

INDEX
  • SNSで話題の「そっくり動画」
  • 偽トム・クルーズができるまで
  • フェイクを証明する方法
  • 社会運動の啓蒙に活用
  • 悪用されるケースも多発
  • 「死」を曖昧にするツール

SNSで話題の「そっくり動画」

実在の人物の映像と、コンピューターで作成されたフェイクの映像の区別がつかない――そんな未来を恐れている人々にとって、最近注目を集めた2つの出来事は不穏なものに思えたかもしれない。
ひとつ目は、視覚効果アーティストがトム・クルーズのものまね俳優と協力して、驚くほど本人そっくりの動画を制作したこと。
機械学習を活用した「ディープフェイク」として知られる技術を使ってつくられたこの動画は、2月下旬にTikTokやツイッターをはじめとする各種ソーシャルネットワーク上で何百万回も視聴された。
ふたつ目は、70年代から80年代にかけてカリフォルニア州で少なくとも12人を殺害した「黄金州の殺人鬼」の身元特定に役立ったことで知られる、家系図サイトの「MyHeritage(マイヘリテージ)」が、すでに亡くなっている家族などの古い写真からデジタル動画を作成できるツールの提供を始めたこと。
マイヘリテージによれば、写真の人物が頭を動かしたり笑顔になったりする短いループ動画を作成できる新機能「Deep Nostalgia(ディープ・ノスタルジア)」を使って作成された動画の数は、3月8日時点で2600万点を超えたという。