[東京 11日 ロイター] - 日銀は18、19日の金融政策決定会合で示す金融政策の「点検」で、長短金利の引き下げが経済状況が悪化した際のツールの1つであると明確に位置付けるとみられる。同時に、長短金利に引き下げ余地があることを示すため、当座預金の3層構造の見直しを検討する見通しだ。複数の関係筋が明らかにした。

日銀はこれまでも声明文で、感染症の状況を注視しながら必要であれば躊躇なく追加の金融緩和措置を打ち出す方針を示し、政策金利についても「現在の水準またはそれを下回る水準で推移すると想定している」と明記してきたが、市場では金融仲介機能に悪影響が及ぶとの観点から日銀にはマイナス金利の深掘りは難しいとの見方が多かった。雨宮正佳副総裁は8日の講演で「長短金利の引き下げは、金融仲介機能に及ぼしうる影響にも配慮しつつ実施できるようにしておくことが適当だ」と指摘。政策点検を踏まえ、声明文でスタンスを明確化し、マイナス金利の導入で打ち出した3層構造を修正することを視野に入れる。

コロナの感染拡大を受けた政府・日銀の政策対応で、銀行の貸出は堅調に推移している。しかし、収益面への配慮から当座預金残高の3層構造のうちマイナス金利適用残高を減らすなどの措置を打ち出す可能性がある。実際に金利の引き下げを実施する際には、さらなる副作用軽減策を打ち出す構えも示す見通しだ。

長期金利の許容変動幅については「おおむねプラスマイナス0.1%の倍程度」(黒田東彦総裁)を拡大することに慎重な声が目立つ。米国の長期金利が上昇する中、許容変動幅を拡大すれば日本の長期金利に一段と上昇圧力が掛かるリスクがある。日銀では、3月期末に向けて株安・債券安になることへの警戒感が強い。日銀は国債買い入れオペを工夫することで金利が上下しやすくする手法を模索するとみられる。

一方、政策点検のもう1つの主眼である上場投資信託(ETF)の買い入れ手法の見直しについて、雨宮副総裁は「必要な時に、思い切って積極的な買い入れを行うことで、最大限の効果を上げる運営を行っていくことができないか、考えたい」と指摘。日銀は現在、買い入れ上限を年12兆円、原則的な買い入れめどを年6兆円としているが、何らかの目標を残した上で、メリハリを付けた買い入れ手法を模索するとみられる。

日銀のETF購入を巡っては、市場機能や上場企業のガバナンスへの影響などの問題点が指摘されてきた。日銀はこれまでの緩和政策による実体経済や金融市場への効果や副作用を点検し、ETFの買い入れについても分析結果を公表する方針だ。

日銀は昨年12月、新型コロナで2%の物価目標の達成がより困難になったことを受けて政策点検の実施を表明。しかし、3月の年度末を前に金利上昇が株安を誘発するなど市場環境は大きく変わった。日銀は決定会合まで市場動向を注視し、点検結果を踏まえて資産買い入れ手法の変更を最終的に決める。

*内容を追加して再送します。

(和田崇彦、木原麗花 取材協力:杉山健太郎 編集:石田仁志)