(ブルームバーグ): 東京電力ホールディングス(HD)の小早川智明社長は、2030年度に二酸化炭素(CO2)の排出量を13年度比で半減するとの同社の目標達成には原子力発電所の再稼働が不可欠との考えを示した。

小早川氏は4日のインタビューで、同社が強化を目指している洋上風力発電所などの再生可能エネルギーの電源開発には時間がかかることから、CO2排出量の半減目標は30年度時点で一定量の原子力発電がなければ達成は難しいと指摘。同社が保有する原発の再稼働は「必須」だと述べた。

50年に温暖化ガス排出量を実質ゼロとする政府方針を受け、東電HDとしても同様の目標に挑戦するという方向性については、社内でも意見は一致しているという。

達成に向けては、水素やアンモニアを使った火力発電や再生可能エネルギー、原子力などCO2が発生しない電源の選択肢の中でポートフォリオを組んで対応するとの見通しを示したが、電源構成の割合など具体的な道筋は明確になっていないと話した。

東電HDが再稼働を目指す柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)を巡っては、安全対策工事が完了していなかったことや同社社員が他人のIDカードを使用して中央制御室に入っていたことが相次いで発覚した。

一連の問題を受けて、東電HDは先月26日、再稼働に必要な検査の完了時期を従来の6月から「未定」へと変更しており、同社の経営再建の柱の一つでCO2排出量削減にも大きく寄与する同原発の再稼働には不透明感が増している。

小早川氏は、地元住民の間に不安が高まっているのは当然だとし「私としても言い訳ができない重大な事案だと考えている」と語った。その上で、柏崎刈羽原発の再稼働は「地元の理解があることが大前提」で、原因究明や安全対策を進めることで信頼回復を図りたいとの考えを示した。

東電HDが販売した電力に由来するCO2排出量は13年度時点で約1億4000万トンで、国内全体の約1割に相当する。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づき、日本政府は国全体で30年度までに温暖化ガス排出量を26%削減(13年度比)することを目指している

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