[東京 3日 ロイター] - 三井住友フィナンシャルグループは、石炭火力発電への新規融資を全面停止する方向で調整に入った。「原則実施しない」としていたこれまでの方針を厳格化し、政府が高効率と位置付ける発電所も融資対象から外す。投資家をはじめ環境問題への関心が世界的に高まる中、日本の金融機関も気候変動への姿勢を強化する必要に迫られている。

複数の関係者が3日、ロイターに明らかにした。今後打ち出す新たな融資方針に明記する。

三井住友FGは現行の融資方針で、新設の石炭火力発電所への支援を「原則実施しない」とする一方、政府がエネルギー基本計画の中で高効率と位置付ける「超々臨界圧火力発電」などへの融資については裁量の余地を残してきた。今回の改定で、すべての石炭火力発電を対象から除外し、厳格な融資姿勢を明確にする。

環境問題への取り組みが世界的な課題となる中、二酸化炭素(CO2)の排出増につながる動きには投資家や環境団体、国際機関が厳しい目を向けている。

国連のグテレス事務総長は2日、国際組織「脱石炭連合」の会合にビデオ演説を寄せ、経済水準の高い経済協力開発機構(OECD)加盟国に対し、2030年までに石炭火力発電を廃止するよう呼びかけた。

経済活動を支える金融機関の融資姿勢も国際社会から注目を集めており、関係者の1人は今回の三井住友FGの動きについて、世界的な圧力の高まりを踏まえたものであることを示唆した。同関係者は「環境団体からなどの風当たりが相当強いのは事実だ」と語った。

三井住友FGはロイターの取材に対し「当社として決定した事実はない」と回答。その上で、政府の脱炭素化目標などを踏まえ、「今後も環境や社会へ大きな影響を与える可能性が高い事業・セクターへの方針をプロアクティブ(積極的)に見直していく」とした。

超々臨界方式は、石炭を燃焼させて作る蒸気を従来より高温・高圧にして発電効率を上げる仕組みで、CO2排出量を削減できる。三菱UFJフィナンシャルグループとみずほフィナンシャルグループはいずれも、現在の融資方針の中で同方式への融資を完全には排除していない。

MUFGは今後の方針について「足元の情勢を踏まえ、従来にも増して、国家レベルでの政策や方針と国際的な議論の流れ、また、ステークホルダーの声といったさまざまな要素を考慮し検討していく」とコメント。みずほFGは、投融資の取り組み方針を「定期的にレビューし、方針の見直しと運営の高度化を図る」とした。

石炭火力発電所を巡っては、三菱商事がベトナムで計画中の「ビンタン3」から撤退する方針を固めている。

(梅川崇 編集:久保信博)