武田薬:糖尿病治療薬4剤を帝人ファーマへ譲渡、1330億円-負債減へ
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糖尿病領域は、かつて武田薬品工業の主力領域でしたが、現在の同社の説明では、「今回の譲渡対象製品は、今後も患者さんのニーズを満たす重要な役割を担うものの、当社の長期的成長を牽引する主要ビジネスエリアの製品には該当しません。」とのことです。しかし、この売却が有利子負債の圧縮を目的としていることは明らかです。
同社は2018年に、アイルランド製薬大手「シャイアー」を買収し、現在は売り上げベースで3兆円を超えています。買収時点で、武田薬品とシャイアーは同規模の会社で、株式の時価総額に関してはシャイアーが武田薬品を上回っていたことから、「小が大を飲み込む」買収、また、日本企業の過去最大規模の買収劇として話題になりました。その結果、武田薬品は、国内2位の企業に対して売上ベースで2.5倍ほどの規模を持つという、国内製薬企業では圧倒的な大手企業になりました。
しかし、当時のシャイアーの買収に要する費用は6~7兆円と巨額で、これのおよそ半分を武田薬品が発行する新株との株式交換で行いましたが、残りの3兆円余りは負債(融資)で調達しました。さらに当時の武田薬品に約1兆円、買収先のシャイアー自体にも2兆円程度の有利子負債があったため、買収直後の有利子負債は、6兆円程度に膨らんでいたとみられます。
一方で1株180円の年間配当は続けており、利益に対する配当金の比率は2019年度決算で128%、2020年度決算で634%(収益の5倍以上を配当金として拠出)とそれだけでも内部留保の流出が止まらない状況にあります。
買収直後時の試算で、仮に資本コスト(利子)が1%で年間600億円、2%なら年間1200億円の利払いが必要な状況になってしまったため(正確な数字は知りません)、武田薬品はその後有形資産、無形資産を売却し、有利子負債を減らす努力をしています。今回の売却で、さらに900億円程度の圧縮が見込めます。
最近では、創業地大阪本社ビルの売却、大阪工場の一部売却、アリナミンで知られる同社一般用医薬品事業の売却、一部の国の海外事業の売却などを行い有利子負債の圧縮を行っていますが、今回の虎の子「糖尿業事業の売却」(前年度売上高308億円)には、今後の収益性に対する不安がよぎります。
武田薬品の「親会社所有者に帰属する当期利益(連結)」は、2018年度1,352億円、2019年度442億円です。