2021/3/4

【辻愛沙子】自分時間を豊かにする「スマートドリンキング」と「微アル」のすすめ

NewsPicks, Inc. Brand Design Senior Editor
 コロナ禍で生活スタイルは一変し、1年が経った。いまだ経済・文化を含めた社会全体の不確実性は高まるばかりだ。「みんなで同じ」ができなくなった状況下でキーワードとなっているのは、「多様性」。
 これは「飲み方の選択肢」においても広がりつつある。「多様性」の象徴として、アサヒビールは新しく「BEERY」を発売。アルコール度数0.5%の「微アルコール=微アル」。今までにない斬新な切り口の商品だ。
 海外でも一足先に「ソバーキュリアス」という、「あえてお酒を飲まない選択をする」ムーブメントが広がっている。飲み方の多様性を叶える「微アル」は、ビジネスパーソンにどう影響をもたらすのか。そして、ライフスタイルをどう変えていくのか。
 今回、微アルを通して現代を考察いただくのは、クリエイターとして活躍する辻愛沙子氏。
 アイディア出しに行き詰まったとき、あえてちょっと“外す”ことの大切さ。100か0かではないその間の飲料という存在感、「微アル」をどんなシーンで楽しむのか、などクリエイターならではの視点で語っていただいた。
INDEX
  • 「微アル」とクリエイティブの関係
  • お酒の強さや好みに合わせて、選択肢が増えること
  • 大事なのは0でも100でもない「その間のもの」
  • 性別のステレオタイプからの解放

「微アル」とクリエイティブの関係

 わ、おいしい。思っていた以上にビールですね! アルコール度数0.5%とは思えないくらい、しっかりとコクのある味。香りも、いわゆるビールのガツンと来る感じがしっかりありますね。飲む前は柔らかい香りを想像していたのですが、そこもちゃんとビール!
 コロナ禍になる前の話ですが、夜、会食からオフィスに戻って残りの仕事を片付けるとき、今まではアルコールを飲むのを我慢していたんですよ。強い人は気にせず飲めていいなっていつも羨ましくて。ビールの喉越しがまた気分転換にいいんですよね。
 あと私、平日、めちゃくちゃ忙しくて溜まっていた連絡を土曜日に一気に片づけて、日曜日の午前中は比較的ゆったりすることが多いんですけど、そういうときに飲んでます。心情としては、酔いたいわけではないけれど、単純に「アルコールを飲みたい」という欲求なんですよね。
 クリエイターの仕事って、意図的に“外す”のが大事だと思っていて。ずっと企画と向き合っていると凝り固まってくるんですよ。「Think outside the box」という言葉があるように、いいアイデアは目の前の箱じゃないところに落ちていることが多い。でも、意図的に“外す”って意外と難しいんです。
 ちょうどいい“外し方”をずっと探していたのですが、その点、息抜きに微アルを飲むことって、ちょっと心地よくなれて、適度にゆるめられるのでちょうどいい。前に進むときに大事なのは、「アクセルを踏むこと」だけじゃないんですよね。でも、「オフ状態になりたい」わけではない。
 人生って短距離走ではなく、長距離走なので、そういう「抜き方」を覚えていかないと……と最近思い始めました。今までの自分の中には、「仕事がオンで、お酒がオフ」という切り替えの選択肢しかなかったのですが、微アルはオフまではいかず“適度に抜く”が叶いそう。
 夜、オフィスに人がいなくなって、足を崩してラクな格好で企画書を作るときが、一番筆が進むんですよね(笑)。「そういう状況」を意図的に作り出せたら最高です。
 よく仕事を一緒にしているアートディレクターも息抜きにお酒をよく飲んでいるので、冷蔵庫のビールをこっそりこれに変えようかな(笑)。

お酒の強さや好みに合わせて、選択肢が増えること

 あらゆる面で時代が変化する過渡期の今、アルコールについても「多様性」がトピックになっていますよね。そもそもですが、アルコールに限らず、「みんなで同じものを楽しむ」流れはかなり減ってきています。
 YouTubeなんかも履歴からキュレーションされるので、自分に合ったオススメ動画が出てくる。
 つまり、みんながそれぞれ、違うオススメ動画を見ているんですよね。「鬼滅の刃」くらいヒットしたら別ですが、学校の教室で「昨日のあのテレビ見た?」という話題で、見てないと置いてけぼりになるから必死で同じものを見る、みたいなことは昔と比べてあまりないように思います。
 今まで表立って言えなくて周囲に合わせて我慢していたことが、SNSの発展によって意外と共感を集める、なんてこともありますし。
 アルコールについては、一昔前は全員が最初は同じものを飲む空気があったり、「お前、飲まないの?」と暗にお酒を強要したり、といったことが当たり前に行われていました。
 アルコールの強さって体質なので、根性論では乗り切れないもののはずが、「コミュニケーションの正しいあり方」としてセットで語られている時代が長く続いていたわけです。
 最近は人権やハラスメントが問題視されるようになり、そういうのは少しずつ減ってきていると思います。コロナ禍でのリモート飲みも、その流れを加速させているのではないでしょうか。それぞれが家で飲むときに、同じものを飲むのを強要されても……と思いますし。一杯目であっても好きなものを飲みたいですよね。
 ただ、あくまでもまだ過渡期の段階です。新卒の社員がお酒の場で、「今は多様性の時代ですから」と言いづらいこともあると思います。そういうときにアサヒビールの「スマートドリンキング宣言」のように、飲料メーカーさん側が多様性を謳うのはありがたいですよね。
※アサヒビールは昨年12月に「スマートドリンキング宣言」を出した。「スマートドリンキング」とは、お酒を飲む人も飲まない人もお互いが尊重し合える社会の実現を目指すこと。お酒を飲む人・飲まない人、飲める人・飲めない人、飲みたいとき・飲めないとき、あえて飲まないときなど、さまざまな人々の状況や場面における「飲み方の選択肢」を拡大。その上で、多様性を受容できる社会を実現するために商品やサービスの開発、環境づくりを推進していく。

大事なのは0でも100でもない「その間のもの」

 私自身、お酒は大好きなのですが、実は強くはなくて、それが悩みで。もっと飲みたい気持ちはめちゃくちゃあるのに、すぐに酔ってしまう。それに、自分の好きなお酒と、ちょうどいいアルコール度数が一致していないんですよ。
 私はビールが好きなので、ビールを飲みたいのに、ビールで酔わないものとなるとノンアルコールビールしかない。だから、「微アル」のようにアルコール度数が0.5%のビールが出てきたのはすごく嬉しい。
 飲めない人たちもアルコールを否定したいわけではないし、飲む人たちもソフトドリンクを否定したいわけではない。
 アルコールに弱い人と一緒に飲むと、「飲めなくてごめんね」と言われるし、私も「飲んでいい? ごめん」って言っちゃうんですけど、何も悪いことしていないから、本来は「ごめん」じゃないはずで。
 同じ分量のアルコールを飲まないと、お互いに気を遣う感覚が心のどこかにあるってことですよね。自分の中に選択肢をインストールしきれていないというか……。
 社会が確実に変わってきている中で今、大事なのは0でも100でもない「その間のもの」。アルコール度数5%の普通のビールと0%のノンアルコールビール、ではなく、0.5%という新しい選択肢。それぞれが、自分のお酒の強さや好みに合わせて最適なものを選べる、選択肢が増えることが大事なんですよね。

性別のステレオタイプからの解放

 お酒に強い・弱い以外にも、性別のステレオタイプもあります。私のパートナーは体質的に一滴も飲めないんです。一緒に飲みに行くときは、私がお酒を注文して、彼がノンアルコールを頼むわけですが、たいてい私のところにノンアルコールが置かれる。
 アルコール度数の低い甘い系のお酒も同様に、「女の子が飲むもの」というイメージがある。だから逆に、「男なのに飲めないの?」とか「男なのに甘い系飲むの?」などと言われて苦しんだことがある人もいるんじゃないかと思います。
 「BEERY」はそういう人を救う存在になるかもしれません。もちろん、「男なのに~(女なのに~)」といったイメージがなくなるように、社会を変えていかないといけないのですが、今まで続いてきた社会構造をいきなりドラスティックには変えられないのも事実。そこにこういった商品があると、変わっていく大きな力になると思うんです。
 パッケージの中性的なデザインも、誰が持っていてもしっくりきます。黒を基調としていながら、渋い感じでもなく、イラストにオシャレな感じもあって素敵。手触りがマットなのもいいですね。私自身も仕事でデザインをするので、勉強になります。
 広告クリエイティブの仕事をしていると、性別や年齢で区切ってターゲットを決めなければならないことが多くて、難しいなといつも思うんです。
 でも、性別や年齢じゃない「微アルを楽しみたいライフスタイル」という切り口の商品って素晴らしい。こういう、性別や年齢を限定しない商品が増えていってほしいと思います。
■アサヒ ビアリー 発売情報
先行発売:2021年3月30日(火)
東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、山梨県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県の1都9県
全国発売:2021年6月29日(火)
商品に関するお問い合わせ:
アサヒビール お客様相談室 0120-011-121
(10:00~12:00・13:00~16:00 土日・祝日を除く)
https://www.asahibeer.co.jp/