2021/3/8

【ずん飯尾が聞く】ニューノーマル時代の資産形成の最適解とは

NewsPicks, Inc. Brand Design Senior Editor
コロナ禍で、社会の在り方や人々の価値観は一変した。大企業の中には巨額の赤字を計上し、無配に転落していく企業もある中で、個人の資産形成もまた不確実性を増している。こうした状況で、我々は未来に向けた資産形成にどのように向き合っていくべきなのか。

「資産運用の知識も経験もゼロ」というお笑いコンビ、ずんの飯尾和樹氏が、投資信託運用会社の三菱UFJ国際投信 常務取締役兼商品マーケティング部門長の代田秀雄氏に、先が予測しづらい時代の資産運用の極意について聞いた。
INDEX
  • お笑い芸人の金融リテラシー“格差”の実態
  • ベテラン個人投資家に選ばれるファンドとは
  • 長く投資を続けられるファンドに育てたい
  • 売買を繰り返すほど、株の利益は小さくなる?

お笑い芸人の金融リテラシー“格差”の実態

代田 最近は投資についてお話しされるような芸人さんもお見受けしますが、飯尾さんは資産運用のご経験はありますか?
飯尾 それが、まったくないんです。同じ事務所のキャイ~ン天野ひろゆきは芸能界きっての投資家として知られていますが、相方のウド鈴木はギャラに課税されることを知らずに使い果たして怒られていたくらい。芸能界でもお金のリテラシーとなると相当差がある気がします。
 僕自身は、いろんな人から儲け話を持ち掛けられることはあるんですが、一切乗りません。うまい話が僕のところに回ってくるなんて普通に考えてありえないし、実際にそういう儲け話に乗って損している奴もけっこういるので、投資にあまり良いイメージはないですね。
代田 確かに、絶対儲かるとか、あなただけに特別に教える、なんていうのは信用してはいけませんね。
飯尾 銀行の定期預金の利息がほとんどつかない時代に、それ以上の儲けがそんな簡単にできるわけがないと思っています。儲けたいなら額に汗して働くしかないですよ。
代田 利息の原資は住宅ローンや企業への貸し付け、国債で運用した収益等で得られる収益です。一方で、少し視野を広げて資産運用として考えると、金利が低いからお金は増えないということにはなりません。
 たとえば株価は、金利が低いほうが上がりやすい場合もあり、むしろ有利なこともあるんです。
飯尾 実は、僕の祖父が投資家だったようで、好きなビールメーカーの株を買ったりしていました。その祖父が、「投資するなら持ってる金の1割以内にしとけ」と言っていたのはよく覚えていますね。
 手元に10万円があるなら、投資は1万円以内にしておけば失敗しても生活できなくなることはないと。その1万円を失ったとしても、2万3万と追加するのは絶対ダメだとも言っていました。
代田 それは良い教えですね。株は値上がりする可能性がある分、値下がりするリスクもあるので全財産をつぎ込むべきではありません。
飯尾 そもそも、株の利益ってどこから来るものなんですか。
代田 たとえば、東京証券取引所には2021年1月末時点で4000社近い企業が上場しています。仕入れや経費、従業員のお給料、税金などを差し引いても利益が残った場合は、そこから株主に配当を支払う企業もあります。
 何年もこうしたことが続けられている企業であれば、プラスの価値が相対的に大きいと考えられます。その価値は株価として反映されていき、成長する企業の株価は上がる傾向にあります。

ベテラン個人投資家に選ばれるファンドとは

飯尾 だったら、成長する企業を見極めて株を買えば儲かるわけですね。
代田 そうですね。ただ、4000近い企業の中から儲かる企業を見極めようとすると、いくら時間があっても足りません。
 最近は忙しい人や手軽に投資をしたい人には、市場にまるごと投資できるような投資信託、いわゆるインデックスファンドが人気です。日本の株であれば、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)の値動きに連動する投資信託がわかりやすい。
飯尾 僕みたいに何から始めていいかわからない人には、とっつきやすいですね。
代田 当社には、投資家の皆さんから多くの支持を得ている「eMAXIS Slim」というインデックスファンドシリーズがあります。
 この中で、全世界の株式市場に投資する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、投資について情報発信するブロガーの投票で選ばれる「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2020」で第1位を獲得しました。
 この賞は、投信ブロガーの方々が自分たちの手でよりよい投資環境を作るために実施しているイベントで、ベスト20の中に当シリーズの投資信託が6本もランクインしているんですよ。
注)「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2020」は、投信ブロガーの投票を運営委員会が集計したランキングです(投票者数:185名)。投票期間:2020年11月1日~11月30日。投票対象:2020年10月31日までに設定された投資信託(ETF含む)。海外籍ETFについては、日本の証券会社を通じて買付可能なもの。※将来の運用成果等を保証したものではありません。(出典:https://emaxis.jp/lp/slim/pr1/index.html
飯尾 投資や投資信託に詳しいブロガーなどからも選ばれるというのは信頼できる感じがしますが、どんなところが評価されているんですか。
代田 投資は難しいというイメージをお持ちの方は多いと思うのですが、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」であれば、この投資信託1本を買うだけで、日本をはじめ、先進国、新興国など50の国・地域の2985銘柄(2020年12月末時点)に投資できるんです。
 たとえば、マイクロソフトやAmazon、アップル、アリババやサムスンなどですね。
 投資先をひとつの企業の株に絞り込んでしまうとどうしてもリスクが大きくなりますが、投資対象を分散すれば値動きはひとつの企業の株に投資をした場合と比較すると安定します。
 日本だけでなく海外にも広く分散すると、そのリスク軽減効果はさらに高くなるんです。
 投信ブロガーの皆さんからも、「これ1本で全世界への株式投資が完了してしまうという、簡単でわかりやすいのが魅力」や「世界の株式に分散投資でき、コストの面からも手軽」などの声をいただきました。
飯尾 少子化が進む日本よりは、海外の企業のほうが儲かりそうなイメージはありますが、一つの投資信託を買うだけで世界中の企業に投資できるってすごいですね。
代田 もうひとつ支持されているポイントがあって、それが低コストです。
 投資信託は、販売時にいただく購入時手数料、保有中に運用会社によるファンドの運用や受託会社による財産の管理等の対価として差し引かれる運用管理費用(信託報酬)といった運用コストがかかります。
 eMAXIS Slimシリーズは “業界最低水準の運用コストを将来にわたって目指し続けている”*ことが最大の特徴です。そのため、購入時手数料がゼロ、信託報酬率も最低水準に引き下げてきました。
 同じ投資信託でもプロのファンドマネジャーが投資する銘柄を選定する商品だと信託報酬率が年率2%を超えるものもあり、例えば、1000万円投資するとそのうち20万円が信託報酬として差し引かれてしまうことになります。
 「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」であれば信託報酬率が0.1144%以下なので、1万円程度で済むことになります。
※eMAXIS Slimシリーズでは業界最低水準の運用コストを目指しますが、その達成を保証等するものでありません。

長く投資を続けられるファンドに育てたい

飯尾 それじゃあ20分の1、95%オフじゃないですか。別にそこまでしなくてもいいんじゃ? 閉店セールでもそんな数字見ませんよ。
代田 eMAXIS Slimが誕生した背景のひとつに、運用会社の間でコストを下げる熾烈な競争が起きたことがあります。値下げ競争が過熱して運用会社が疲弊すれば、いつかは脱落するところも出てくるでしょう。
 加えて、次々に低い運用コストの投資信託が出てくると、投資家の方はその度に買い換えることを検討しなければならず、中長期の投資から遠ざかります。そこで、当社としてはどこかが引き下げをしてきたら追いかけることにしたわけです。
 実際に、これまで何度となく信託報酬の引き下げを重ねてきました。これでeMAXIS Slimシリーズに投資する人は、業界最低水準の運用コストで投資を目指し続けることが可能になります。あちこちで「よくやるなあ」と言われましたよ。
飯尾 強い思いとともに試行錯誤された結果が、0.1144%ですか。えげつないなあ。でも、それで利益は出ているんですか。
代田 確かに当社の実入りは少ないのですが、信託報酬が20分の1しか取れないなら、20倍の純資産総額を獲得しようと社内で目標を立てていました。
 その結果、投資家の皆さんから多くのご支持をいただいて、計画を上回るスピードで純資産総額が増えていき、現在はeMAXIS Slimシリーズ全体で7000億円を突破しました。(2021年1月末時点)
 投信ブロガーの皆さんの声を直接聞くためのブロガーミーティングもいち早く開催して、応援の声だけでなく批判の声にも耳を傾けてきたことも、ご支持をいただいた背景にあると思っています。
※eMAXIS Slimシリーズでは業界最低水準の運用コストを目指しますが、その達成を保証等するものではありません。※業界最低水準の運用コストを目指す一環として、公正な比較の対象となる他社類似ファンドに係る信託報酬率が当社ファンドを下回る場合、ファンドの継続性に配慮した範囲で信託報酬率を引き下げることを基本とします。ただし、信託報酬率が業界最低水準となることを、保証等するものではありませんのでご留意ください。(出典:https://emaxis.jp/lp/slim/pr1/index.html
飯尾 すごいですね。僕もファンの皆さんの声は大切にしていますが、エゴサーチはちょっとできないですよ。「なんでこんなおもしろくない奴がテレビに出ているのかわからない」なんてことばかり書いてありますから、耳を傾けすぎるとメンタルがやられそうですし(笑)。
 それでも、その道に詳しい人や長く続けている人の声は、参考になるでしょう。

売買を繰り返すほど、株の利益は小さくなる?

代田 飯尾さんは投資というと、株を売ったり買ったりして儲けるものというイメージがあるかもしれませんね。
 でも、米国のある調査会社の研究によると、米国の株価指数に連動するファンドを20年保有し続けた投資家と、安い時に買って高い時に売ろうと売買を繰り返した投資家では、持ちっぱなしのほうが投資成果が上回ったというデータがあります。
飯尾 それは意外です。投資というと、売ったり買ったりするものだと思っていたので。
代田 本当に底の価格で買って、上がりきった価格で売ることができればそれが一番儲かるわけですが、現実にはよほど天才か予言者でもない限り、ほとんど無理なんです。
 底だと思って買ったのにもっと下がるとか、上がりきったと思って売ったらそこからどんどん上昇していくなんてことはザラにありますから。そんな失敗を繰り返すぐらいなら、ずっと持ちっぱなしにしているほうが手間もストレスもありません。
 あるいは、飯尾さんのように「投資はちょっと怖い」と感じる人は、毎月一定額をコツコツ買い付けていく積み立て投資もおすすめです。
 相場が上昇すれば積み立ててきた資産が増えるし、下がればこれから投資する分が安く買えるため、その後相場が値上がりすれば将来の利益を大きくすることが期待できます。
 つまり、最終的に相場の値上がりを前提にするのであれば、上がっても下がってもハッピーなので、ストレスや怖さが少ないんです。
 実際、eMAXIS Slimシリーズを支持してくださる投資家の多くは、持っているだけの長期投資か、ほったらかしの積み立て投資が多いですね。
飯尾 ほったらかしでいいのなら僕でもできそうです。やっぱり資産運用する人って増えているんでしょうか。
代田 2018年につみたてNISAという、少額から「長期・積立・分散投資」を支援するための非課税制度が始まったことや、2019年に「老後2000万円問題」が話題となったことで、老後に備えて資産形成しようとする投資家の裾野が大きく広がりました。
 日本の投資信託は約80年の歴史があるのですが、2018年までで967万人と想定される投資信託保有者数が、2018年以降たった3年程度で300万人も増加したと考えられています。
飯尾 僕のツイッターのフォロワーは19万人ですけどね……。芸能界には定年はないものの不安定だし、もらえる年金も少なそうなので僕も老後に不安を感じることがあります。
 しかし、老後の備えとなるとアラフィフの僕にもまだ20年近く先のことになる。そんなに長い間、同じ投資を続けていて大丈夫なんでしょうか。
代田 2020年には、世界最大級の米国の運用会社であるバンガードという会社が日本支社の閉鎖を発表し、インデックス投資家の間で不安が広がったことがありました。
 外資系はどうしてもこうしたビジネスジャッジをすることがありますが、日本に根差した大手の運用会社ではそんな心配もあまりないと思っています
 また、万が一当社のような運用会社が破綻したとしても、投資家の資産は別に保管されているのでお金が返ってこないという事態にはなりません。
 飯尾さんはじわじわくるネタと親しみやすいお人柄で、30年以上という長い間お茶の間から根強い人気を誇っていらっしゃいます。eMAXIS Slimシリーズも、投資家の長い人生に寄り添い続けられる存在でありたいと思っているんですよ。
飯尾 僕の場合は、お笑いに対して未練がましかっただけですけどね(笑)。頭がキレキレでセンスの塊みたいな後輩でも、早々に見切りをつけて他の業界で成功している人は大勢います。
 ありがたいことに、キャイ~ンやネプチューンといった同期芸人がブレイクしたり、若いころに一緒に仕事したADさんが出世してプロデューサーになったりして、僕のことを呼んでくれているからやっていけてるようなものです。
代田 ここまで息の長い活動が続けられるのは、飯尾さん自身の魅力があってこそですよ。飯尾さんがおっしゃる「頭の切れるセンスの塊みたいな」芸人さんっていうのは、投資の世界でいうと「個別株投資」みたいなものですね。
 ごく少数ではありますが、天才的なトレードで莫大な資産を築く投資家はいるものです。でも、eMAXIS Slimシリーズは、飯尾さんのようにごく普通の生活者の方々の間でじわじわと人気を広げ、長くお付き合いしながら資産形成をサポートできる存在でありたいと思うのです。
飯尾 誰にでもできるというのは、大事なことだと思います。とはいえ、僕のギャラだけはeMAXIS Slimシリーズみたいに業界最低水準を目指さないようにしたいですね!