2021/4/17

【岸本拓也】技術やプライドは邪魔。職人から「食人」主導の店へ

フリーランスライター
街を歩いていて、巨大な明朝体の文字が目に飛び込んできたことはないだろうか。「考えた人すごいわ」「告白はママから」「あせる王様」「並んで歯磨き」……。

店の看板のようだが、これは店名なのか? それとも何かのメッセージ? しかも周囲には行列ができている。

「これ何?」「パン屋さんだって」「うそぉ!」

こんな戸惑いと驚きを日本全国で勃発させているのが、ベーカリープロデューサーの岸本拓也氏だ。

冒頭に挙げたのは、すべて彼がプロデュースした高級食パン店の名前である。パンという身近な食品の買い物を、エンターテインメント体験に変えた岸本氏とは、いったいどんな人物なのか。その正体に迫る。(全7回)
岸本拓也(きしもと・たくや)/ジャパンベーカリーマーケティング 社長、ベーカリープロデューサー
1975年、神奈川県生まれ。関西外国語大学を卒業後、横浜ベイシェラトンホテルに入社し、広報PRやレストランカフェ、ホテルベーカリーショップのマーケティング、企画業務を担当。2006年、横浜・大倉山に「TOTSZEN BAKER’S KITCHEN(トツゼンベーカーズキッチン)」を開業。2011年よりベーカリー開業プロデュースをスタート。2013年、ジャパンベーカリーマーケティングを設立。ベーカリープロデューサーとして、国内外の300店舗以上(進行中案件を含む)をプロデュース。著書に『ゼロから始める個性派ベーカリー』『「考えた人すごいわ」を考えたすごい人』がある。
INDEX
  • 難しいフランスパンより食パン
  • パン屋の「当たり前」を見直す
  • プロデュース業に進出
  • 被災地にプロデュース第1号を開店

難しいフランスパンより食パン

前回お話ししたように、僕は10年前、クオリティー重視で通好みのパン屋さんから、地元のお客さんに愛される店へと舵を切りました。
思えばそれが、現在のベーカリープロデューサーという職業を確立する土台となりました。