2021/2/7

【提言】中学受験=成功神話から目覚めよ

NewsPicks プロアナ
火曜夜10時からNewsPicksとTwitterで配信中の「The UPDATE」。

2月2日のテーマは「中学受験合格は成功への近道なのか?
佐渡島 庸平氏(コルク代表取締役)、小宮山 利恵子氏(スタディサプリ教育AI研究所所長・東京学芸大学大学院教育学研究科准教授)、井本 陽久氏(「いもいも教室」主宰、栄光学園数学科講師)、稲田 大輔氏(atama plus代表取締役CEO)、豊田 真由子氏(元厚労省)とともに議論した。
東京都の私立中学進学率は年々上昇傾向。
小学校1年生から塾選びを開始する家庭もあるなど、中学受験競争は年々激化している。
背景には、中高一貫化により高校からの生徒募集停止の動きがあり、大学付属校へ中学から入っておこうという考えが定着化しつつある。
さらに文科省は若者の東京一極集中を避ける為、大学定員数を縮小。早稲田大、明治大、法政大などの有名大では定員抑制により、数千人単位で合格者枠が減少している。
名門大への門戸が狭まっていく危機感から、中学受験の人気が高まっているのだ。
また今年はコロナ禍で授業進度が遅れたことから、中学受験を諦めたという保護者の声も。さらに一部の塾では、新型コロナウイルスの影響で定員拡大ができないと言う。
コロナ禍のような緊急事態が今後も起こりうる可能性は少なくはない。
経済・社会の在り様も変化が著しい時代、親の世代とは全く異なる価値観で生きていかなければならない我が子に、中学受験をさせるべきなのか?徹底討論。
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中学受験合格は成功への”特急券”か?

豊田 学歴や肩書きは関係なくなる。そもそも中学受験は良い大学に入るためではない。
各々が適切な持ち場で役割を果たすことで社会は成り立っている。
良い大学に入るのを目標にするのではなくて、まずは視点を見直すべきなのではないか。
井本 親の「前のめりすぎる」姿勢が危ない。
子供の先を見すぎて、子供の「今」が見えなくなっている。親が子供の教育に前のめりになりすぎてしまっているのが危険。
「出来るようになる=試行錯誤して自己流を生み出す」こと。親が親自身のやり方を子に与えてしまうのがよくない。
人間は失敗して学んでいくので、失敗して良くて、それの繰り返しだと思う。
小宮山 成功の定義を「生涯学び続けられるか?」と設定した場合、そのきっかけとして中学受験が学びの習慣づけになるならYES
佐渡島 実質的にはみんなNOだと思う。
目標を持ったり、努力、忍耐力などの非認知能力を上げるという意味ではYES。
しかし今、東京で起きている塾の仕組みは極端な正解主義を追い求める、行き過ぎた教育になってしまっている
受験という制度自体は否定しないが、中学受験塾の激化の現状は行き過ぎているのではないか。
稲田 勉強の仕方次第。
子供のころの勉強はその後の人生に多大なる影響を与えるので、間違った方法で勉強させてあげて欲しくない。
丸暗記や詰め込み教育では子供が潰れてしまう。
基礎や原理原則からといった正しい勉強法をするのであれば中学受験に賛成。
豊田 中学受験は特に親のマネジメント能力が非常に重要。12歳はまだ幼いので、スケジュール管理や宿題管理など、子のマネジメントにコミットしている親は多い。
子供にやる気を無理矢理にでも上げてもらうのは根気がいる。

進学塾は絶対に必要か?

小宮山 大手進学塾に通っていたが、子供が受験に合わなかったので中学受験はやめた。
成績が悪かったわけではないが、毎週膨大な紙の量で、月に何度も試験がある状況は子供には合わなかった。
「なぜ紙をやめないのか?」と塾の先生に尋ねたことがあるが、「親は子供の勉強状況の可視化を望んでいるのでデジタルにはできない」との返答があった。
豊田 今の中学受験入試は、丸暗記では太刀打ちできないのが殆ど。基礎、土台がしっかりしてないとそもそも解けない。
中学受験とは、世の中の課題を解決する為に土台を積み上げていく作業。
受験の表面的な部分だけを見て子供を哀れに思うのではなく、子供に何を求めているのかという受験勉強の本質を見てあげた方がいいのではないか。
佐渡島 塾に入れる=他人の作った問題を解いていく習慣に入っていくのと同じ。
他人が作った問題を解くのではなく、子供自らが問題を見つける側になることが、これからは大事なのではないか。
井本 大人が冷静にならないといけない。子供にとっての学びとは何か?子供の興味関心を知る。
現状、子供達が強いられているのは言われたことを真面目にきちんとできるようになれということ。
問いを持つことや、脱線することは求められていない。
教師として長年子供を見てきた経験から言えることだが、子供は例外なく何かに没頭できる才能を持っているし、その時の子供は本当にキラキラしている
子供は自主的にも学べるので、親は多少放っておいても問題ない。
稲田 中学受験自体を悪だとは思っていない。
勉強は本当は楽しいもの。勉強の仕方が間違っているからつまらなくなってしまうだけ。
子供達が自分の力で勉強ができた時はゲームよりもハマっているようだった。
豊田 前を向いて生きていけるだけの力が大切。何度でもへばってもいい。人生何度でも失敗してもいい。親は絶対に否定しないこと。

まず親が勉強せよ

小宮山 自分の子に「お母さんとは価値観が違うので選択権を持たせてくれ」と言われたことがある。
中学受験をやめた時に子供と相談した結果、「海外留学」という回答があった。中学受験以外にも、国内外に留学するという選択肢もある。
まず親が勉強しないとダメ。日本の社会人は平均して1日6分しか勉強していない。
親が勉強しないと、子供と認識がずれちゃう。子供よりも前に親が勉強することが大事なのではないか。
井本 しがらみから自由になって、周りの価値観を手放してみて。
先のことを考えるよりも子供の「今」を見てあげよう。

今回のキングオブコメント

子供の未来に一番安心したがっているのは親だ。
中学受験は親の不安を安心に変えるための不安産業になっており、その産業を肥大化させる不健全な構造になってしまっていると指摘。
子供をどう変えるのか?ではなく「大人はどのような心構えを持つべきか?」を問うてみる。親としての視座がアップデートされた議論となった。
番組後半戦では、多様な進路選択が拡がる令和時代の最高の教育プランとは何か?について議論した。
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