(ブルームバーグ): ミャンマーで1日、総選挙で不正があったとして軍が非常事態を宣言したことを受けて、スズキが現地の工場稼働を停止するなど、同国で事業を展開している日本企業に早くも影響が出ている。

ミャンマーで四輪や二輪を生産しているスズキの広報担当者は非常事態宣言が出されたミャンマーの2工場での稼働を同日午後から停止したことを明らかにした。工場だけでなく、営業を含む他部署の従業員も業務を中断して帰宅したという。

同社はミャンマーで1999年から二輪車、四輪車の生産に取り組んでいる。同社のウェブサイト上の資料によると、2019年には1万3300台を生産し、1万3206台を販売。同国での新車販売で6割のシェアを握っている。

同社は120億円を投じ、首都のヤンゴン市南東のティラワ経済特区の工業団地内に四輪車の溶接や塗装、車体組み立てを行うための年産4万台の新工場も建設中で、21年9月の稼動開始を予定している。スズキ広報担当は新工場への対応については現時点でコメントできることはないとした。

現地でインキや接着剤の製造販売を手掛ける東洋インキSCホールディングスでも現時点では大きな影響は出ていないものの工場の稼働をいったん止め、社員を帰宅させた。同社グループ広報室の木村衣里氏は、2日以降も引き続き状況を見ながら対応するとしている。

軍が権力掌握へ

キリンホールディングスはヤンゴンとマンダレーでそれぞれビールの醸造所を運営。現時点では通常通りの生産だが、従業員の安全の観点から当局から命令があった場合は停止することを計画している。現地にはインターネットもなく、情報収集に努めているという。

 現地工場の稼働を今月に予定していたトヨタ自動車広報担当の山田詩乃氏は、状況について情報を収集しているところで、今後の対応は決まっていないと述べた。同社初となるミャンマー工場の年間生産能力は2500台で、ピックアップトラック「ハイラックス」の生産を予定している。

成田空港とミャンマーの首都、ヤンゴン間直行便を運航しているANAホールディングス(HD)の広報担当者はまだ情報収集中だが、現時点で欠航の予定はないと述べた。

ヤンゴン証券取引所は接続の問題が発生したために1日に取引を停止した。15年に発足した同取引所には大和証券グループ本社傘下の大和総研と日本取引所が出資しているほか、ミャンマーでは日本の財務省や金融庁も証券取引法制の整備を支援するなど、官民で金融近代化支援に取り組んできた。

大和証Gは現地企業と折半出資の証券会社「ミャンマー証券取引センター」も運営しており、大和証券広報担当者は、同センターの「現地職員とは綿密に連絡を取れる状況にある。ヤンゴン証取の休業が長期化した場合の当社ビジネスへの影響は精査中だ」と電子メールでコメントした。

ミャンマー軍は1日、昨年11月の総選挙で不正があったとして非常事態を宣言した。軍が権力を1年間掌握するとしている。アウン・サン・スー・チー国家顧問ら政府指導者は同日早朝に拘束された。

(スズキの工場停止措置やキリンHDの対応などを追加して更新します)

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