(ブルームバーグ): 個人投資家がヘッジファンドを相手に株取引で闘いを繰り広げるプラットフォームを提供してきた米ロビンフッドは、10億ドル(約1045億円)余りの調達を余儀なくされた。こうした投資家は同社のオンライン取引を利用し、ヘッジファンドが空売りした銘柄を大量に購入、株価を押し上げてきた。

決済機関の米国証券保管振替機関(DTCC)は28日、ロビンフッドなど数週間にわたりゲームストップ株などの急騰を支えた格好となった複数の証券会社に対し、巨額の追加保証金を求めた。事情に詳しい関係者2人が述べた。DTCCの広報担当者は各社への請求額を明らかにしないものの、同日末までに業界が求められた保証金は合わせて335億ドルと、260億ドルから増えたと説明した。

手数料無料の取引アプリで人気を集めたロビンフッドは岐路に立たされた。一部取引を禁止したほか顧客にポジションを解消させることで自社がかぶるリスクの圧縮を図り、顧客や政治家からも批判を招いた。28日夜までには既存投資家から10億ドル強を調達したほか、銀行の与信枠から数億ドルを引き出した状況が明るみに出た。

ロビンフッドが銀行与信枠を一部活用、市場混乱のさなか-関係者 (1)

ロビンフッドのブラッド・テネフ最高経営責任者(CEO)は同日のブルームバーグテレビジョンのインタビューで、決済機関などに入れる保証金などの義務は「交渉の余地がある性質のものではない」と語った。

ゲームストップ株など乱高下する銘柄を巡り証券会社が考えねばならない問題の一つは、決済が終わるまでの期間にDTCCに差し出す保証金だ。証拠金のような役割を果たすこの保証金は、株価の変動が激しい日には証券会社側の資金逼迫(ひっぱく)につながり得る。ゲームストップ株は28日、一時483ドルから112ドルまで急落した。

ゲームストップ株の時価総額110億ドル消失、時間外では急反発 (2)

ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、ラリー・タブ氏は「ロビンフッドが非道なことをしているわけではない」とし、DTCCの判断が鍵を握ると指摘。「『2日後の決済日には株価がゼロになっていることもあり得るので、その間に証券会社が持ちこたえられる資金を持ち合わせているか確信できない。これは危険すぎる』と判断するのはDTCCだ」と説明した。

ロビンフッドは10億ドル強の資金を既存投資家から得られたことについて、「投資家からの強い信頼の証しであり、当社の顧客サービス継続に役立つ」と発表文でコメントした。

米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は先に、ロビンフッドがセコイア・キャピタルやリビット・キャピタルなどに連絡を取り、これら既存投資家が28日夜の会合で緊急資金提供を提案したと、関係者5人を引用して伝えていた。

原題:Robinhood Raises $1 Billion in Dash for Cash After Trader Revolt、Robinhood Says It Raised Over $1 Bln From Existing Investors(抜粋)

(第5-6段落に保証金の意味合いとアナリストコメントを加えて更新します)

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