(ブルームバーグ): 日産自動車は国内の主要拠点で勤務している全契約社員を原則的に正社員として登用する方針を明らかにした。業績の大幅悪化を受けて進めてきたコスト削減の成果で財務に余裕が出てきたこともあり、待遇を改善して人材の確保に努める。

日産広報担当の百瀬梓氏は「職場の業務ニーズや働く人々の価値観や就労ニーズの多様化に対応」するため、同社に在籍する契約社員を今年4月に正社員とすると明らかにした。現在800人弱いる契約社員を正社員化することで職場の一体感向上や効率・効果を高めた業務運営が可能となるほか、個々の社員のモチベーション向上やスキルアップを図っていくとしている。

事情に詳しい関係者によると、正社員と非正規労働者との間の不合理な待遇差の解消を目指して政府が提唱する「同一労働同一賃金」の原則に対応する。職場管理の効率を向上させるのも狙いで、従来の契約社員制度は廃止するという。

日産は2018年11月のカルロス・ゴーン前会長の逮捕後に業績が大幅に悪化。前期(20年3月期)の純損益は6712億円の巨額赤字に転落。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり今期も6150億円の赤字を見込む。昨年5月に公表した事業構造改革計画では24年3月期までの4年間で生産能力を20%削減するなど年間固定費を18年度比で3000億円削減する方針を打ち出した。

その後、新車販売の回復や一過性の経費削減の効果も含めて7-9月期の営業損益は48億円の赤字と4ー6月期から赤字幅が大幅に縮小。今後は北米で投入した新型「ローグ」(日本名・エクストレイル)などで新車攻勢をかけて業績の本格回復を目指す。

雇用維持鮮明に

別の関係者は、正社員にすることで年収も増えることになると述べた。厳しいコスト削減を経て財務に余裕が出てきたため、業務に熟練した人材をつなぎとめる狙いもあると言う。

雇用期間を定めて労働契約を結び、雇用期間が終了すると契約を更新しない選択肢が取れる契約社員と比べて正社員は解雇へのハードルが高く、今後業績の悪化がさらに進んだ場合には収益の重荷となってくる可能性もある。

1999年、経営危機に陥っていた日産に出資したルノーから送り込まれたゴーン元会長による「リバイバルプラン」では、国内工場の閉鎖や2万1000人の人員削減などを柱とする厳しい施策を打ち出した。

直近の日産の赤字規模は当時に匹敵する規模となっているが、現段階で国内のリストラは実施しておらず雇用を維持する姿勢が鮮明となっている。

(日産が記事内容を確認したことを受けて更新します)

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