2021/1/23

【落合陽一】エンタメ×教育のポテンシャル

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毎週水曜日22時〜 落合陽一と各界のプロフェッショナルによる“ハードトーク”をお届けする「WEEKLY OCHIAI」。
1月13日は、ワタナベエンターテインメント代表取締役会長 吉田 正樹氏をお招きし、「エンタメ×教育のポテンシャル」について対談を行った。
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コロナ禍においてエンタメコンテンツは変化が求められている。
世界の突然の変化に試行錯誤した2020年に対し、2021年はエンタメのニューノーマルを創り上げていくこととなるだろう。
少し明るい未来を描くとするなら、子どもたちが特定の職業を志すというよりも、それぞれがどうやったら輝けるか?ということを考えるのが、これからのエンタメ教育に求められるのではないだろうか。

エンタメは不要不急か

2020年4月に発令された一度目の緊急事態宣言下においてライブ・エンターテインメントは不要不急のものと位置付けられた。
業界全体で悩み抜いた中で吉田氏は「エンターテインメントとは価値のあるものをつくって人の心を解放するもの」であるとし、
「自信を持って必要かつ喫緊のものであると言えるものをつくる努力、またできる限り全ての感染予防対策を行ってきている」と語る。
2020年のライブ・エンターテインメント市場規模は、2019年から約8割減。
しかし、この数値は観光業界、飲食業界、航空業界等々が受けている打撃ほど、世の中にはインパクトを持って周知されていない。

芸能プロダクションは必要か

2020年多くのタレントが芸能事務所から退所、独立し、話題となったが、芸能プロダクションとは本来どのような仕事なのか?
落合 調整コストがものすごく高い系の、タレントマネジメントの仕事がめっちゃある。
適切なところに適切な出役をはめていく、という仕事と、このタレントをどういう風に育て伸ばし、価値になるようつくっていくかの大きく二つがいずれも必要である仕事だと思う。
吉田 :まずはその人がどういう風になっていったらいいか、また本人がどうなりたいか(何をやりたいか)のマッチングからプロになるまでの開発育成を行い、
その後プロになってからどういう仕事をしていけば良いかというプロデュースを行う。
自身でセルフプロデュースができる人もいるが、人に言われて初めて気付くことというのは誰しもあると思うので、その出会いをどう作れるか。
そしてそれらの能力を一つの作品として作り上げ、届けるコンテンツ制作まで行う。
テレビ番組であればテレビ局に任せるのではなく、タレントの特性を理解した上でこういう番組にしましょう、ということまで提案する。
以上3つが、プロダクション含めエンターテイメント業界の大きな仕事であり、昨今コロナに関わらず様々なチャンネルが生まれている中で、どのような作品にするのかということまで考えるのが基本的ではないか。

デジタルでも本質は変わらない

佐々木:芸能プロダクションは現状、テレビのプロデュースに関しては強いと思うが、デジタルに関してはどうか?
吉田 :デジタルになっても共同作業であり、一緒につくるのが基本。
映画がテレビになった時に、それまで映画会社専属でやっていた俳優さんのためにプロダクションができ、脚本家と呼ばれていた人たちが放送作家となったように、新しい時代に適したそれぞれの分担を作った。
それと同じように本質は変わらない。
アイディアを出す人、それをまとめる人、メイクする人、現場で仕切る人、いろいろあるけども、それがYouTubeやインターネットに適した役割ができるはず。
落合 :芸能事務所からの退所祭りみたいなのと、YouTuberの独立騒動とはちょっと違う。
YouTuberは最初から個人事業主で、自分でプロダクションプロセスまでやってるチームを抱えている人がどこかと契約してやってくって話だけど、
芸能事務所に所属していた芸能人は、事務所とともに作ってきた信用資産があって、あとはひとりでイケるじゃんって出ていく人が多くて、
その信用資産みたいなのゼロからひとりでできたの?っていうとそうでもないかなと思っている。
今後そういった独立していく人たちをどうやって捌いていくのかっていうところに違うマネジメントモデルが生まれそう。
吉田 :それはどの山に登りたいかってことにもよると思う。
高い山に登りたければ、チームで登ろうとする。
大きなことをやるためには仲間は多い方が良いし、多様なアイディアによってそれは実現していくものである。

なぜ、今「エンタメ×教育」なのか

吉田 :2004年から立ち上げたワタナベエンターテインメントカレッジは、従来オーディションやスカウトであった発掘からの育成ではなく、
その前段階の「100人いれば100通りのプロデュース」をテーマに各々の個性を見極めた開発育成をやりたい、というところから始まった。
ところが、時代の移り変わりと共に多様化が進み、コロナとは関係なく、明確なロールモデルが無くなり、俳優、お笑い芸人、歌手などジャンルを括っていくことが難しくなってきている。
そういった状況で、自分自身も何がやりたいのか、何を本当に欲しているのかわからない子供たち、 若者が増えてきた。だけど皆それぞれ才能や良いところはある。
そこをやらなくちゃいけないな、というのが「エンタメ×教育のポテンシャル」の中での大きなテーマ。

“自分”を発見する

2021年4月から、N高等学校とワタナベエデュケーショングループがタッグを組み、オンラインで高校卒業資格を取りながら、エンタメも勉強できるという取り組み(ワタナベNオンラインハイスクール)を始める。
落合 :N高は僕も出張講義で行ったりしてて、素晴らしいなと思うところがいろいろある。
今までの普通の教育であれば得られなかったような才能が輝けることもある。
そこにエンターテインメントや芸能の要素が入ってくるのは良いと思うし、そういうのをどう教えたら良いかもわかっていないと思うから、この取り組みを聞いてなるほどと思った。
吉田 :背景として、少し前までは皆テレビに出たかったが、今は別にテレビに出たいわけではないけど、何か人を楽しませる仕事はしたいという子が増えている。
N高がそもそも、大学進学以外にも多様な出口を示している学校なので、我々はその中の一つとしてエンタメという出口があることは重要ではないかと考えた。
また、オンラインなので、どこに住んでいても等しくチャンスが与えられる。
何かをしたい、まだわかんないけど、とにかく楽しいことをやりたいという人に入ってほしい。
吉田 :すごく重要なのが「自己発見」というカリキュラム。
あなたの心を解放して、自分自身がどういう人間で、どういうことをやりたいか、ということを知りましょう、という。それは実は教育にとってすごく大事。
加えて、エンタメ教育はエンタメのプロになることだけに捉われず、広く人間力を高めることにつながる。
例えば演劇のロールプレイングの授業で、いじめっ子といじめられっ子のロールプレイして、役割をチェンジすると「あ、いじめられてるってこういう表現だ」と理解し、人間の精神の構造がわかる。
相手の立場でものを考える訓練になり、想像力と人間性が養われる。
吉田 :停滞した世の中を打ち壊すためには、どんどん新しい人に入ってきてもらいたい。
何をしたら良いのかを迷わず、少しでもやりたいことをやってみよう、というのが僕のメッセージ。
そしてそれは無力ではなく、ひとりひとりの力は小さくても、いろんな大人の力を借りたり、チームの力で大きな山に登ろうという第一歩を踏み出したい。
若い時の出会いが大切であり、勉強だけではなくこれが好きかな?と思う程度で構わないから色々なことをやってみてほしい。
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