2020/12/24

【松田弘貴】混乱の後、シリコンバレーに生まれる「新たな芽」

Sozo Ventures Principal
コロナ禍で揺れた2020年。シリコンバレーもその例外ではなく、大きな変化を余儀なくされた。来る2021年、シリコンバレーはイノベーションを生み出し続けられるのか。NewsPicksプロピッカーで、Sozo Ventures Principalの松田弘貴氏が分析した。
3つのポイント
①アメリカ国内外で新たなイノベーション拠点が生まれる
②VCの「選択と集中」でスタートアップの二極化が進む
③トレンドは「ヘルスケア」「フィンテック」「生産性向上」
2020年はシリコンバレーにとっても大きな変化の年でした。3月中旬のロックダウンを機にビジネスや生活環境が大きく変わっていきました。
シリコンバレーは2021年以降もイノベーションの中心地であり続けるのでしょうか。ベンチャーキャピタル(VC)の役割はどう変わっていくのでしょうか。また、どんな領域に投資マネーが集まっていくのでしょうか。
シリコンバレーのビル群(写真:heyengel/iStock)

シリコンバレーの今後

2020年にシリコンバレーで起こった大きな生活の変化は「人の移動」でした。
これまで起業家やエンジニアを中心に多くの人々を惹きつけてきたシリコンバレーですが、コロナを機に多くの人がこの地域を去り始めています。
例えばUnited Van Linesのレポートによれば、サンフランシスコから他地域への引っ越し依頼は昨年同時期と比較し、20%以上増えています。
確かにシリコンバレーは家賃を始め生活コストが高かったですし、スタートアップ側から見ても、近年は高い人件費、オフィス賃料、州税に加え、2019年9月にはUberドライバーなどのギグ・ワーカーの法的保護を強化する「AB5法案(通称「ギグ・エコノミー規制法」)」が成立されるなど、ビジネスを運営していく上で最善の地とは言えなくなっているのも事実です。
AB5法案では、UberやDoorDashは、ギグ・ワーカーを従業員として扱い、最低賃金以上の給与と失業手当、健康保険の提供が必要となり、シェアリング・エコノミーのビジネスモデルが壊滅する可能性がありました。
そのためUber,Lyft、DoorDash、Instacart、Postmatesは総額$200Mというカリフォルニア州史上最も高額な選挙運動資金を投じ、対抗法案である「プロポジション22」の承認を目指しました。スタートアップのビジネスモデルと、行政による従業員やユーザーの権利・法的保護の対立はより激しさを増しています。