英スパイ小説作家、ジョン・ル・カレ氏死去
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本人が英国の諜報機関、MI6で勤務しながら、諜報機関の中の人の立場から語られる一連の小説を著した人です。そこには、人をだますのも仕事の内で、卑劣で、人間性をないがしろにすることもやむをえないプロの、葛藤が描かれています。
その葛藤に多くの読者が共感しえたのは、諜報活動がソ連などの全体主義と対峙するために、絶対に必要な活動という認識が冷戦下の欧米にはあったからでしょう。そういう活動を積極的に、限定的ながらも公開することは、世論の支持を得られる、という欧米政府の判断がありました。日本では、北朝鮮や中国を相手取った日本人諜報機関員の活躍を描いたスパイ小説というのはあまりありませんでした。
スパイ小説は、冷戦時代が花形だったといえるでしょう。諜報機関は昔も今も活発にかつどうしていますが、強大な絶対的な敵、というのが消滅した、というのが理由ともいえます。
アル=カーイダやイスラーム国を相手にしたスパイ活動を描いた小説のベストセラー、というのは思い浮かびませんが、アフガニスタンやイラクの人々への英米の工作というのは、陰惨極まるもので、読者が感情移入しにくいと思われます。ソ連は、所詮、西洋人でした。
冷戦下でもソ連人が書いたソ連人スパイの小説、というのは無かったですが、今も中国人が書いた中国人スパイの小説、というのは無さそうです。実例は山ほどあるのですが、そういうものを出版できる体制ではないからでしょう。正規の軍人が一帯一路で『ダイ・ハード』ばりの大活躍をする映画などは、流行っているようです。東西冷戦の時も,「陰謀論」が流行っていました.
何しろ情報が少ないので,言いたい放題でした.
ただ,現在と違うのは,それが「事実を元に産まれたフィクション」という体裁を取るか,「SNS上の真実めいたコンテンツ」という形を取るか...という違いだと思います.