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注目のコメント
経済学を学んだことで大企業の創業者に成れた人間などほとんどいないように、歴史を学んだことで大政治家に成れた人間もそう多くはいません。チンギス・ハーンも豊臣秀吉もリンカーンも、歴史の知識は同時代人の中で決して多い方ではありませんでした。
化学式のとおりに合成すれば毎回同じ物質ができるような自然科学とは異なり、歴史には毎回応用可能な公式など存在しません。その意味では、歴史学の本には、全く異なるケースが並んでいるだけです。
だからといって、何かハウツー本とか経営学の本に成功するための公式が必ずあるかというと、これもかなり危ういところです。
「学びて思わざれば則ち罔し」といいますが、歴史は結局考えるための材料であって、答えそのものではありません。考えるきっかけをくれる材料、ともいえます。
感染症対策の場合、過去の偉人となると、感染症の原因が微生物であるとつきとめたパスツールか、種痘法による予防接種を確立したジェンナーでしょう。だいたい19世紀ヨーロッパで、後に細菌学や免疫学の祖と呼ばれるような人たちです。当時、現場で駆け回って、データを集め、感染症の抑止に筋道をつけたのは、自然科学者です。女王でも皇帝でも首相でもありませんでした。
ただ、医学者や生物学者たちの試行錯誤でも、現場で集めたデータは元より、過去の歴史的記録を渉猟してヒントを探そうとすることは繰り返されています。過去のデータを整理しておくのは歴史学の役割で、将来誰に使われるとも知れない、庶民の病気の大量の記録などでも、自然科学者が考えるヒントを提供する可能性があります。
歴史学はこうやって、経済でも政治でも、その他の技術でも、真剣に考え続けようとする人間には、考えるヒントを提供します。歴史をどう使うのか、とても共感を覚える。
長期投資における企業分析において、最も重視していることが「その企業の沿革を分析する」ことだ。起業家の志やその時の時代背景などに思いを馳せながら仮説を構築することはとてもおもしろい。
例えば、1920年代にアディダスを創ったアドルフ(アディ)・ダッサー、ルドルフ・ダッサー兄弟が、右傾化するドイツという時代背景の中でどのようにスポーツシューズブランドを創ったのか、オリンピックの果たした役割について考えてみるのも面白い。兄弟の亀裂が深まる中でアディダスとプーマに分かれて経営が混乱するが、そこにこそ米国でナイキが勃興できた背景があるのでは・・・など想像を掻き立てられる。
ナイキの創業、隆盛については、ナイキ創業者フィル・ナイトの自伝「Shoe Dog」が面白い。同書に克明に描かれる日商岩井の若い商社マン達の活躍などのサイドストーリーには1980年代の商社の姿が、目を瞑るとカラフルに目の前に現れる。
歴史は仮説構築に時間的な拡がりを与えてくれる。起こっている事実を過去に遡って具体的に検証することで、抽象的で普遍性の高い仮説を構築できる。
分析とは具体と抽象の絶え間ない往来だ。
磯田さんの仰る「思う量」とはその往来のエンジンとなる好奇心だ。「エクストリーム読書術」の第2弾は、大人気の歴史学者・磯田道史氏がNewsPicksに初登場。歴史を軸に、本から学びを得るために欠かせない着眼点を縦横無尽に語っていただきました。
「歴史に対峙するときにありがちなのは、偉人や天才の言葉をそのまま受け取ってしまい、彼らがどのようにしてその境地に至ったのかということに思いを馳せるプロセスを放棄してしまうこと」という言葉にはハッとさせられます。
一方的に教えてもらうという姿勢では学びは得られない――というメッセージは、初日の読書猿さんとも共通。改めて「本気の読書」に挑みたくなります。
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