2020/11/12
【超速】急成長ベンチャーの冒険、「接客DX」という攻めのイノベーションで失われた経済損失を取り戻せ
ジールス | NewsPicks Brand Design
Zeals(ジールス)は、チャットボットのサービスを中心とした既存事業で、快調に売上を伸ばしてきた。
従来カスタマーサポートの場面で使われてきたチャットボットを、マーケティングや購入に応用した先駆者だ。
2019年4月に藤田ファンドから出資を受けて以来、500%成長を記録。もともと右肩上がりだった売上が、コロナ禍でさらに急成長を遂げている
現在では、あらゆる企業のオンライン接客をサポートし、結果、エンドユーザー数はおよそ300万人を超え、会話データも約3.5億回分が蓄積されるまで事業拡大を遂げた。この数字は、チャットコマース市場の中では国内最大規模である。
今年7月、彼らは「チャットコマース“ジールス”から接客DX“ジールス”へ」と第二創業宣言を掲げた。
そしておよそ3ヶ月後の10月、HISと共同リリースを発表し「接客DX」のサービスを開始した。そう、すでに運用が始まっているのだ。ビジネスとシステムに実装し、サービスを開始するスピードは速かった。
起業して最初の1年は「悩み抜き、試行錯誤の末にチャットコマースのジールスへ辿り着いた」と語る清水氏。「接客DX」はコロナ禍を機に突貫で生み出されたサービスのようでいて、実は彼が堅実にチャットコマースに向き合った結果生み出された「第二形態」ともとらえられる。
一体、接客DXとはどのようなものか。若き起業家が見据えるビジョンと戦略を訊いた。
接客DXはツールではなく「プロセス」である
清水正大 「接客DX」とは、チャットボットから有人チャット、ビデオ接客までの一連の仕組みを一括で提供するものです。僕らは「接客DX」を単なるツールの提供ではなく「プロセスの再発明」と定義しています。
今回のHISさんとの取り組みも、ツールを導入いただいたわけではなく、あくまで「新しいオンライン接客の流れそのもの」を導入いただきました。そしてもっときめ細かい、安心して商品を買っていただけるような接客機会を生みだしていく。
実際、HISさんの「接客DX」を利用しているユーザーは、今まであまりネット接客に触れてこなかった40〜60代が中心。店舗に行って人と相談しながら商品を購入していた人たちに届いているんです。
ユーザーの不安を取り除くための様々な手段を提供することによって、本当に安心して商品を買っていただけるようになったことが示されました。これは、コロナ時代ならではの接客の在り方を開拓していくための挑戦だと思っています。
リスクを取っても優先したのは「スピード感」
「プロセス」と言えば簡単だが、有人対応にはオペレーターを多数抱えるというリスクテイクが必要だ。
これまでの「チャットボット×マーケティング」という分野における利益率の高いビジネスとは大きく異なる。このハイリスクな意思決定にどのように至ったのか。
これまでの「チャットボット×マーケティング」という分野における利益率の高いビジネスとは大きく異なる。このハイリスクな意思決定にどのように至ったのか。
社内でもやっぱり割れました。
僕ら、この「接客DX」を実践するためにチャットセンターを建てて人を抱えようとしてるんですけど、人によっては「正気か?」みたいな反応でしたね。
投資家の方にも真っ向から「それは違う」とご意見をいただくこともありました。やっと高い利益率で成長する会社になったのに、損益計算のバランスを壊してしまう、と。それはそうですよね。僕らも本当にこの取り組みが採算に合うのか、正解はわからない。それでも僕らのようなベンチャーこそやるべきだと腹を括っています。
理由は、「スピード」です。
リアル店舗中心に売上を立てていた企業が、いずれも突然のコロナ禍によって危機的な状況に陥っている。その一方でeコマースの企業はめちゃめちゃ伸びている。「このままピンチを見過ごして、eコマースだけ伸ばしていけばいいのだろうか」と違和感があった。
端的に言えば「AIチャットボットの技術をじんわり磨き込んでいきながら進んでいこうよ」という悠長な世界に、僕らはいるべきではないという考えに至ったんです。
コロナ禍によって起こっている深刻な不況の現場で求められているものは明らかにスピード。「DXで未来はこうなるべき」というような構想や予言の段階のお話ではなく、いま目の前で危機に陥っている人たちに対して、いち早くサービスを届けたい。
特に我々のようなスタートアップは、リスクを取ってでも、どこよりも早く新しい体験を生み出す必要があると思いました。今失われているものを、今取り戻す方法を考えつくしたら接客DXに行き着いたんです。
2011年3月の東日本大震災の際に、LINEなどのSNSがライフラインとして広まったことを覚えていますか。当時、LINEは開発中であったけれど、この緊急時の社会課題をいち早く解決するべく、その年の6月に急ピッチでリリースにこぎ着けたという話があります。
比べるのはおこがましいかもしれませんが、我々もコロナ禍による経済危機という社会課題に対して、どうにかできることがないか、そんな思いで接客DXというサービスを世に出させてもらいました。
もちろん、「チャットコマース」という着実に築いてきた事業がちゃんと形になっている今だからこそ、これだけのリスクを取って「接客DX」に挑んでいけます。HISさんとの取り組みも「今すぐ利益を上げないと会社として立ち行きません」という状況であれば、さすがにこのリスクは取れなかった。
チャットコマースという事業にちゃんと挑んでプロダクトを磨けるチームを作れたからこそ、本来の挑戦ができるような場面になった。そういう感覚です。
ジールスならではの強み、ですか? そうですね。コミュニケーションサービスを、テクノロジーとUXの二軸で磨いてきたことでしょうか。
100名ほどいる組織の6割が、コミュニケーションAIを中心とするのエンジニアとコミュニケーションデザイナーという、ユーザーの接客体験をデザインし実装できる職能で占められています。
またエンジニアの過半数は14カ国を超えるグローバル人材から採用しており、近日、GoogleでGoogle Assistantの開発に従事していたエンジニアもジョインすることが決まっています。
成果報酬型はコミットの表明
さらにビジネスとして特異なポイントがある。顧客の売上ごとにフィーがジールスへ支払われる「完全成果報酬型」の契約形態をとっていることだ。聞けば、チャットボットのサービスもすべて「完全成果報酬型」だという。
SaaS、サブスクリプションビジネス全盛の時代に、なぜ「完全成果報酬型」なのか。
SaaS、サブスクリプションビジネス全盛の時代に、なぜ「完全成果報酬型」なのか。
理由は2つあります。
1つ目は、我々が「攻めのDX」を提供しているから、ということ。例えば「この経理業務ツールを入れると手間・作業がこれだけ省けます!」というコスト削減や効率化にフォーカスを当てたのが「守りのDX」。このモデルであれば、定額のシステム利用料をもらうのが理にかなっていると思います。
逆に「攻めのDX」は「家にいながら旬の野菜が手元に届きます!」というように新たな需要を生み出す、売上のトップラインを伸ばすためのDXなんです。その場合、企業の利益を生み出すことが目的になるので、利益が上がる分だけ報酬をいただく、成果報酬型の方が合っている。
2つ目は、ポリシーに近い想いです。
たしかに、ウェブサービスを提供する企業といえば、システム利用料が月額で発生する「サブスクリプション型」が一般的ですよね。ただ、僕らは企業の進化を共に作っていくことにコミットするというフェアネスの意識みたいなものをビジネスモデルとしても示したかった。
この2つの理由は、それぞれ理想と実現可能性という面で、表裏一体だと思っています。
うちのサービスから売上が上がらなかったらお代は頂けない、というリスクを取るけれども、「攻めのDX」として長期的に使っていただける未来はあるので、成果報酬型にこだわっているんです。結果いま、お客様にとても喜んでもらっています。
主語が変化した1年半 次の20年に向けた覚悟
そして来る20年後の未来に備え、「接客DX」という言葉の商標登録も行ったジールス。隙間を縫った堅実なビジネスではありながらも、清水氏は「接客DX」を「今後20年成長し続ける事業だ」と意気込む。
eコマースは20年間で急成長を遂げましたが、それでも日本国内のBtoCの商取引のEC化率は全体の7%だけなんです。残り93%は、未だリアル店舗で売買されています。僕らは、その93%側を本格的にオンライン化していくつもりでいます。
HISさんもリアル店舗でつくっていた数字が非常に大きく、海外旅行の売上高の半分が店舗によるものなんです。つまり、最大でそれほどの需要がオンラインに流れ込んでくる可能性があるんです
自動車産業も、現在はEC化率が1%以下ですが、ネットでの接客体験が整い「ネットで車を買う」人の割合が仮に5%まで増えた場合、約15兆円もある新車の市場に対し、1兆円弱の市場が生まれうるんです。
この変化は一瞬のトレンドではなく、ここから10年とか20年で実現されていくと踏んでいます。そこにジールスはどこよりも最初に名乗りを上げた状態、それが今だと思っています。
経営者としての“主語”の変化
NewsPicks読者でもし清水氏を知っているとすれば、『メイクマネー UNDER30』に出演した際、「日本をぶち上げる」というビジョンと共に、堀江貴文氏に真っ向から反論する、血気盛んな姿かもしれない。しかし目の前にいる起業家からは、ずいぶんと違った印象を受けた。
最後に、経営者として組織のネクストステージを訊くと共に、あのプレゼンで発表していた音声サービスはどうなったのか、と少し意地悪な質問をしてみると、清水氏は考えながらも真っ直ぐに答えてくれた。
最後に、経営者として組織のネクストステージを訊くと共に、あのプレゼンで発表していた音声サービスはどうなったのか、と少し意地悪な質問をしてみると、清水氏は考えながらも真っ直ぐに答えてくれた。
あれは……、フルスイングで大失敗しました。
『メイクマネー』でプレゼンした際には「チャットコマースを活用してボイスアプリを作る」って言っていたんですよね。
「これからは音声の時代だ」って豪語してユーザーの声が聞こえるように、渋谷にもサテライトオフィスを作ったりして。めちゃくちゃ本気出してやってました。
でも、リリース後、全然手応えがなくて、内心、絶望しながらも、へっちゃらな顔で撤退したんです(笑)。
でも、今回の接客DXでも音声サービスのときに得た気づきを大いに生かしています。なにより、その失敗を経験したチームが、改めて僕と一緒にやってくれている。それが心強いですね。
あの時、堀江さんにも「自分たちが一番になりたいだけじゃないの?」って言われたけど、実際そうだったかもしれない。当時は「日本をぶち上げるために僕らが一番になる」って、主語が自分たちだった。
でも今は、主語がお客様に変わってきた気がします。既存事業を通じて、多くのお客様から必要とされ、ウィズコロナによる変革の一翼を担わせていただく機会が増えてきました。
ビジョン自体を伝えるよりも、チャットコマースや接客DXを通じた革命が実現されていくことの方が重要になってきた気がします。それを通して、結果日本がぶち上がればいいなと。
今「何をやるべきか」という構想段階ではなく、もう実際に僕らは走り始めていて、このスピードでやり切ることに夢中なんです。今は仲間が欲しいですね。
現在、社員が100名ほどいるんですが、ここから半年から1年で、会社の規模を3倍にしたいと思っています。つまり200名は採用したい。ピンチをチャンスに変えていくことを最前線でやっているので、その戦場に飛び込みに来てくれて、挑戦の幅を広げていく未来を一緒につくっていきたい。
どんな人と一緒にやりたいか、ですか。マインド的な部分でいうと、今は「誰かのために頑張れる人」が一番必要です。以前は「日本をぶち上げる」という志に真っ直ぐ共感してほしかったけど、誰かのために本気になれる人っていうのが、本質的にはジールスのカルチャーに合うと思います。
接客DXの本質は、日本のきめ細かい「おもてなしの精神」を、いかにデジタル化できるかということだと思っています。だから、会社の文化としても大事にしていきたい。今おもてなしについての本を読み漁ってるんですが、一流のおもてなしの本質は「相手の期待を超えること」にある。
コミュニケーション通じて相手が何を求めているのかを知り、理解した上で一歩超えていく。それをスピードでなのか、クオリティーでなのか。そういった相手の期待値をちゃんと知り、その人の期待値を超えていく、そんな接客DXを通じた「おもてなし革命」を実現できる人に、ぜひ仲間になっていただきたいです。
構成:高木望
撮影:小島マサヒロ
デザイン:堤香菜
編集:中島洋一
撮影:小島マサヒロ
デザイン:堤香菜
編集:中島洋一
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