2020/10/29

【佐藤優】トランプ勝利のほうがマシな「理由」

経営共創基盤(IGPI)  共同経営者/マネージングディレクター
国際政治のスペシャリストである作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏と、「テクノロジー×政治×経済」という斬新な視点で世界情勢を読み解いた『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』が話題の塩野誠氏。
独自の視点を持つ2人の対談・第2回は、直近に迫った米大統領選の行方と、その後の世界情勢について語る。

アメリカにおける中国の脅威とは

塩野 コロナ禍の世界情勢を占う上で、最大のインパクトとして米国大統領選があります。バイデン優勢と報じられていますが、いかがですか?
佐藤 まず米大統領選、ひいては今後の米中関係を考える上で、アメリカが中国をどう捉えているのかを理解しておく必要があるでしょう。
塩野さんは著書のなかでポンペオ(米国務長官)の演説を注視されていますが、私はその前のオブライエン(米国家安全保障問題担当大統領補佐官)にも注目したい。
オブライエンからスタートしてポンペオで完結する一連の演説から、アメリカの中国に対するスタンスを読み解くことができます。
彼らの演説から浮かび上がるのは、アメリカにとっての中国の脅威とは、すなわち共産主義だということです。
中国=共産主義であり、習近平はスターリンの弟子であり、国際共産主義の幻がいまだに渦巻いていることを恐れているのです。
佐藤 私は1992年に旧ソ連の共産党中央委員会の秘密文書を大量に入手したことがありますが、旧ソ連は世界革命というものを本当に最後の最後まで考えていた。そして、今の中国にもかつての旧ソ連ほどの勢いがある。
しかし、中国は共産主義による世界革命なんて考えていない。この現実をアメリカ人は理解しない。
つまり、アメリカにとっての中国とは、すなわちイデオロギーの脅威なのです。