伊藤園、「普通株高・優先株安」の悩み
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これは私がいた頃のみずほ証券が主幹事で、となりのチームが設計しオファリングした案件で、当時よく研究しました。
伊藤園が第一種優先株式(以下、優先株)を発行したのは、2006年9月であり、先ず既存株主1株に対して0.3株を無償割当行った後、10月に公募・売出(オーバーアロットメント含む)および第三者割当増資にて約186億円をファイナンスしました。
当時伊藤園の業績は好調で、コア事業の緑茶事業に加え、タリーズコーヒーを買収するなど積極なM&Aによる資金ニーズが発生していたこと、一方で配当性向が34.7%はあるも、安定的な業績を背景に個人株主から増配圧力がかかっていたことによるファイナンスでした。
そのニーズをかなえるべく設計したのがこの優先株式で
1.優先株は普通株に対して125%の配当を行う
2.一方で議決権はない
というもので、当時論点となったのは、
「議決権はないが、普通株に対して125%の配当を優先して受ける権利」の価値をどう算定するかということでした。
今はこの記事の評価が妥当だとは思いますが、当時はまだまだ混沌としていました。
しかし株価の決定要素は配当や議決権だけではありません。一番は流動性です。
株式で重要なのは株価そのものだけでなく、「いつでも売却出来る」(買いたい時に買えるではない)という部分が極めて重要であり、伊藤園の優先株はここがあまりなかった。売りたい時に売れない株は魅力ないですよね。
客観的に考えれば、当初設計した優先株に配当利回り2.1%、配当性向39%は同程度の配当政策を行っている発行体は、探せばいくつかあったでしょうし、議決権の有無、株式流動性を勘案した場合、あえて伊藤園の優先株を買う必要は見当たらないと言うことなのでしょう。