「私の一票、分割できたら……」本気で実現を目指す大学生ベンチャー
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ある候補者の政策Aは賛成だけど、政策Bには賛同できない……こういう経験、私もあります。自分が持つ1票を賛同具合に応じて複数の候補者に分割投票できたらどうか。そんな仕組みをテクノロジーを使って実現できないかと取り組んでいる大学生のベンチャー「リキタス」を取材しました。ヨーロッパではもう試行例も出ているのだそうです。
社会的選択理論では、このような多数決以外の方法として様々なやり方が検討されています。この票分割方式はコロラド州議会が導入検討しているQV(クオドラティック投票)に近いですね。よく検討されるアイデアの一つですが、当然ながら万能というわけではありません。
例えば、
1. 選択肢の多さ
2. 人々がどこまで選考順を認識できるのか
3. 分割する場合の細かさをどこまで許すか
4. 合計する時にどうするか
などの問題を考慮する必要があります。
1は2-4にも関わりますが、投票する対象の選択肢がいくつくらいになると想定されるか。常に2択ならそれほど問題ないのですが、3択以上の場合、色々と厄介な問題が出てきます。
2は、3以上の選択肢があった場合に、その選考順を正しく認識できるのかという問題で、例えば3択の場合じゃんけんのように2個ずつ比較した時の勝敗関係がサイクルを形成してしまったりする事もあり得ます。また、例えば100の選択肢があった場合、自分の中で上位3つくらいまではわかるが、それ以外は評価すらできないという場合。また、特定の選択肢だけは避けたいが、それ以外はどれでも構わないと言った場合の選好の時に、どのように表現できるのか、という問題もあります。
3は、3つ以上の選択肢があった場合、分割する最小単位を例えば0.1とするか、あるいは0.01や0.001とするかで、分割する票の比の幅が大きく変わります。
4の合計の仕方については、例えば選択肢が10個あって、票がバラける場合、多くの人が0.1とか0.2を満遍なく入れている所に、一人の人が1票をある選択肢にすべて投票すると、そのインパクトが非常に大きくなってしまうという問題があります。
この問題を合理的に回避する解決策は私の知る限りありませんが、例えば投票されたそれぞれの値を、平方根を取ったり、10倍して対数を取ってから合計するなどして、1つに集中して投票した場合の効果を緩和する処理が必要となるでしょう。
いずれにせよ、投票対象に対する思いをどう表現するのが投票者にとって最も納得しやすいか、ということが重要で、かつ正直に投票するのが最適となる「耐戦略性」をもつ必要があります。そうでないと思っている選好とは別の投票行動を取ることが最適解になってしまいます。
他にMJ(マジョリティジャッジメント)もいいですね。細かいことかもしれないが他人に選挙権を委託するには、ある程度のハードルを設けないと家庭内の圧や地域柄による圧力がかかってしまうことが考えられるので、記事内でも言ってるようにあくまで補助的な役割に留めておくべきだと思います。液体民主主義はなかなか画期的な案だと思いますが、実用を考えると、今の選挙制度や所得家庭環境などを考慮したやり方にしないと1票の平等性が崩れかねません。それも1つの課題だと思いますが、今後の議論の展望に期待です。