2020/9/24

【解説】なぜ原発輸出は「ゼロ」に終わったのか

片平 知宏
NewsPicks編集部 記者
あっけない幕切れだった。
日立製作所が9月16日に英国での原発建設プロジェクトからの撤退を発表し、日本企業が長らく推進してきた原発輸出プロジェクトがついに「ゼロに」なった。
2006年の東芝の米原発大手ウエスチングハウス買収を皮切りに、官民挙げての「日の丸原発」をはじめとするインフラ輸出がぶち上げられ、日本の「経済成長の柱」としても期待される中で、原発輸出プロジェクトが浮上しては消えていった。
原発の建設費の高騰や再生可能エネルギーが台頭する中で、輸出戦略は完全に行き詰まり、さらには日本国内の原子力建設の技術力も維持が困難になりつつある。
原発輸出の終わりと、原子力技術の低下。議論がなされないままに将来の選択肢は狭まりつつある。
国内外のエネルギー事情に詳しい橘川武郎・国際大学大学院教授は「日本の原発を殺したのは、安倍政権と歴史に残ると思う」と語る。
橘川武郎(きっかわ・たけお) 国際大学大学院教授。1951年生まれ。和歌山県出身。1975年東京大学経済学部卒業。1983年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。同年青山学院大学経営学部専任講師。1987年同大学助教授、その間ハーバード大学ビジネススクール客員研究員等を務める。1993年東京大学社会科学研究所助教授。1996年同大学教授。経済学博士。2007年一橋大学大学院商学研究科教授。15年東京理科大学大学院イノベーション研究科教授。20年より現職。総合資源エネルギー調査会委員。近著に『エネルギー・シフト 再生可能エネルギー主力電源化への道』。

日立の英原発撤退の背景

──日立製作所が英原発建設から撤退表明しました。
橘川 日立製作所の中西宏明会長は過度なリスクは取らないということでイギリスの原発建設をやってきました。