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米宝飾品ブランド、ティファニー買収の撤回に向け、仏高級ブランドグループ、モエ・ヘネシー ・ルイ・ヴィトン(LVMH)のベルナール・アルノー会長が、フランス政府に協力を要請したと政府の方針に詳しい関係者の1人が明らかにした。

LVMHは9日、ティファニーの買収撤回を発表したが、これに至る動きは、フランス最大の富豪であるアルノー氏が始めたと事情に詳しい関係者2人が語った。同社の広報担当者は、いかなる種類の圧力も行使していないと述べ、これらの主張を正式に否定した。

LVMHがティファニーを160億ドル(約1兆7000億円)で買収する合意が昨年11月に成立した。しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウン(都市封鎖)の影響で世界各地の店舗が営業停止を余儀なくされたほか、海外旅行も制限され高級品需要が打撃を受ける中で、買収の履行に困難が生じた。

LVMHは電子メールで配布した資料で、米政府がフランス製品に関税を上乗せする危険を理由に来年1月6日より先に買収完了を遅らせるよう仏政府から要請され、ティファニー側も年末までの延期を求めてきたため、取引を実行できなくなったと説明した。

米国との通商摩擦に言及したルドリアン仏外相の書簡を同社は買収撤回の理由の一つに挙げた。だが、関係者の1人によれば、それらの協議の進行状況を知るため、アルノー氏が個人的に政府に働き掛けた。

アルノー氏は経済・財務省に当初助けを求めたが断られ、外務省に協力を要請したという。

フランス大統領府の報道官と経済・財務省は、いずれもコメントを控えている。外務省にもコメントを求めが、これまでのところ返答はない。

LVMHのジャンジャック・ギオニー最高財務責任者(CFO)は政府に同社が協力を求めたのかと尋ねる9日の会見での質問に対し、「冗談でしょう。その書簡をわれわれが手に入れたと真面目に言っているのか。そのような質問には答えたくもない」と語った。

原題:LVMH’s Arnault Leaned On French Government to Exit Tiffany Deal、LVMH Board Says Can’t Carry Out Tiffany Acquisition (1)(抜粋)

(LVMH広報の否定のコメントを追加して更新します)

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