2020/9/7

【新】黒船ドキュサイン、日本の「ハンコ文化」を近代化せよ

NewsPicks CXO
ついに時代が追いついてきた。
コロナ禍に見舞われるなか、世界で最も注目される企業の一つと言えるだろう。米ドキュサイン。電子契約サービスの世界最大手だ。
2003年、米不動産業界に広がる大量の紙の契約書や手書きのサインをなくそうと創業し、右肩上がりの成長を続けてきたテックカンパニーである。2018年には米ナスダックに上場した。
今、リモートワークが定着する中で、紙の文書に署名・押印をするために出社を余儀なくされているのは、何も日本に限らない。オンラインで文書を承認できる電子契約サービスは、世界中でなくてはならない存在になりつつある。
そうした中、ドキュサインが強いのは、既に世界180カ国で事業を展開しているからだ。アップルからフェイスブックまで、多くの米テック企業も利用。
日本では2015年、シヤチハタ社と業務提携をして、日本の「ハンコ文化」に対応してきた。国内ではシェア8割とも言われる日本最大手の弁護士ドットコム(サービス名クラウドサイン)を追撃したいわけだ。
果たしてコロナの追い風はいかほどか。これを機に、世界で最も契約業務のデジタル化が遅れていると言われる日本を、どう攻略するか。
そして、日本のハンコ文化はなくせるか──。
世界でただ一つ「ハンコ万能主義」を貫く、日本のDXの成否を問う特集「THE・ハンコ」。初日の本日は、ダニエル・スプリンガーCEOが語る「日本のハンコ」をお届けしよう。
ダニエル・スプリンガー (Dan Springer)/ドキュサインCEO
DRI/McGraw-Hill、Pacific Telesisでキャリアをスタート。Modem Media社のマネージング・ディレクター、Telleo, Inc.のCEOなどを歴任。ハーバード大学でMBA、オクシデンタルカレッジで数学および経済学学士号を取得。米レスポンシス社のCEOを経験した後、ドキュサインに入社し、現職。

コロナ後、ユーザーは3倍増へ

──コロナの追い風は、どれくらい吹いていますか。
ダニエル 年初から好調ではあったのですが、大きな変化が起こったのは、今年3月初め頃でした。
それまでは、好調なときで四半期ごとに新規顧客は3000ほど。それが今年の第1四半期(2〜4月)、第2四半期(5〜7月)は、それぞれ約1万ずつ増えたのです。
ざっと3倍くらいのペースですね。この半年間だけで2万もの顧客が増えたのは驚きでした。
先日の決算発表(5〜7月)では、新規契約の増加に伴い、売上高は前年同期比61%増を記録。通常は30~35%増です。つまり売上高の伸びも、過去の好調な四半期に比べて、2倍近くになりました。
背景にはもちろん、パンデミックの影響があります。以前はオフィスで仕事をしていた多くの人たちが、在宅ワークへと移行しました。そのため企業の間でも、これまでとは「違うやり方」をしなければならない、という動きが生まれた。
様々な仕事のプロセスを、早急にオンライン化する必要が出てきたわけです。
例えば、以前は営業担当者が契約書を顧客に直接届けることが主流でした。契約書にサインをしてもらうために、対面で会う必要があったからです。
ときには会社に郵送したりすることもありましたが、今は、お客さんがオフィスにいません。担当者たちの住所を調べて、自宅に郵送しないといけないけれど、それは難しいですよね。
そこで、オンラインの電子署名機能を使うしかない、と多くの企業が痛感したわけです。そうなれば、我々の出番です。「すぐに使いたい」という話が、大量に舞い込みました。

日本は「近代化されていない」

──日本も同じような状況でした。リモートワークにシフトする上で、オンライン化されていないプロセスが一気に露呈し、出社を余儀なくされるケースも見られました。
そうですよね。私たちは、すでにアメリカやヨーロッパの国々では、民間企業と同じように、政府機関のDX(デジタル・トランスフォーメーション)のニーズにも応えていました。
日本でも、政府が中小企業への融資や、消費者への金融支援を行う緊急プログラムがたくさんありましたよね。欧米ではそういった融資の申請用紙に、ドキュサインを使っていただけたのです。
(写真:Yagi-Studio / iStock)