2020/9/4
【新】異色のベストセラー経済書が教える「資本主義の正体」
まるで預言者のように、新しい時代のムーブメントをいち早く紹介する連載「The Prophet」。今回登場するのは、独立系の物理学者として活躍する長沼伸一郎氏だ。
長沼氏が1987年に出版したデビュー作『物理数学の直観的方法』は、「無名の20代の研究者による自費出版」というハンデをものともせず、まったく新しい数学の参考書として爆発的な反響を呼んだ。同書は当時、神田の大手書店で、かの『ノルウェイの森』を抜いてベストセラーNo.1に躍り出たこともある。
そしてこの春も、長沼氏の最新刊『現代経済学の直観的方法』(講談社)が、各所で静かなブームを巻き起こしていた。
巧みなレトリックにすっと腹に落ちるロジックで、経済学への「直観的な」理解の道を切り開くこの一冊。「通勤通学などの間に1日あたり数十ページ分の読書をしていくだけで、1週間から10日程度で経済学の大筋をマスターできる」という長沼氏の言葉に偽りはない。
だが、読者の心を真に揺さぶったのは、全9章で構成される同書の「最終章」だろう。その中で長沼氏は、今の世界経済は一種の「劣化」状態にあると警鐘を鳴らし、暴走する資本主義から「降りる」手段を考察している。
今、世界で起きている現象を理解するための必読の書と言うべき『現代経済学の直観的方法』。今回の「The Prophet」では、前後編でそのエッセンスに迫っていきたい。