2020/8/21

【解説】「脱石油依存」元年。変革に本気を出す石油メジャー

The New York Times
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ヨーロッパに異変あり

石油メジャーが電力会社のようになる──。ヨーロッパを中心に、今年は石油会社にとって転換期になるかもしれない。
7月末に英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは、オランダ沖で大型の洋上風力発電所を建設する契約を勝ち取った。
工業用電池メーカーを傘下に持つ仏トタルは今年に入ってから、スペインの太陽光発電所とスコットランド沖の風力発電所に大規模な投資を行う合意を結んでいる。
トタルはさらに、スペインの電気・天然ガス事業を買収。シェルやBPに続いて、電気自動車の充電事業を拡大しようとしている。
一方で、石油メジャーは資本予算の削減に伴い、油田の掘削計画を手放し始めている。
シェルは最近、メキシコ湾と北海における新規油田開発の延期を表明した。英BPは今後、新たな国で資源探査を行わないとしている。
石油製品が気候変動に及ぼす影響を懸念する政府や投資家からの働きかけを受けて、ヨーロッパの石油会社ではクリーンなエネルギー(基本的に電気だが、水素も含まれる)の生産が加速している。
さらに、石炭や石油から自然エネルギーへの移行をよりクリーンに行う燃料として、天然ガスの生産も促進している。
「脱石油依存」改革を打ち出している英BPのバーナード・ルーニーCEO(ロイター/アフロ)

変革意識を高める経営陣

新型コロナウイルスのパンデミックによる石油需要の急減と、それに伴う収益悪化も、新たな警告として受け止められている。事業の構成を変えない限り、石油会社は絶滅に向かう恐竜になりかねない、と。
この発展的なビジョンは、石油業界の重鎮の多くが共有しているからこそ、より注目に値する。