(ブルームバーグ): 香港警察はメディア界の大物で民主活動家の黎智英(ジミー・ライ)氏を香港国家安全維持法(国安法)違反の疑いで逮捕した。

ライ氏が会長を務めるメディア企業ネクスト・デジタルは、手錠姿の同氏が10日午前に自宅から連行されるライブ映像を流した。逮捕についてどう思うか記者から質問された同氏は「私がどう思うか? 彼らは私を逮捕したいのだろう」と答えた。

ネクスト・デジタルの香港紙で民主主義の論調で知られる蘋果日報(アップル・デーリー)は、200人近い捜査員が家宅捜索で複数のオフィスに入ったと報じた。香港警察はフェイスブックへの投稿で、ネクスト・デジタルのオフィスが並ぶ将軍澳の地域にあるビルに入るための捜索令状を取ったと説明したが、アップル・デーリーへの言及はなかった。

警察の公式発表では、39歳から72歳までの計7人が国安法違反の疑いで逮捕された。同法の下、外国勢力と結託して国家安全に危害を加える行為などが罪となる。警察は逮捕した人物の名前を挙げず、捜査中だとした。

匿名を条件に話した警察当局者によれば、逮捕されたのはライ氏のほか、同氏の息子2人とネクスト・デジタルの最高経営責任者(CEO)や最高執行責任者(COO)兼最高財務責任者(CFO)が含まれる。

逮捕報道を受け、ネクスト・デジタルの株価は一時17%下落し過去最安値を付けた。その後は民主活動家らがソーシャルメディアでネクスト・デジタル株を買うよう市民に促したこともあり、一転して344%上昇する場面が見られた。10日の同社株は183%高で引けた。

香港の民主活動家アグネス・チョウ氏、自宅で逮捕される-有線電視

ジョンソン英首相のジェームズ・スラック報道官は同日、黎智氏らの逮捕に「深い懸念」を表明。「報道の自由は中英共同宣言と香港基本法で明示的に保障されており、国安法第4条の下でも保護されるはずだ」と指摘。「国安法が反対派を沈黙させる口実として使われているさらなる証拠だ。香港当局は住民の権利と自由を守るべきだ」と記者団との電話会見で語った。

一方、在英中国大使館は英国側のこうしたコメントは「無責任」であり、中国の問題への「新たな干渉行動」だと主張。「香港は法の支配下にある」とし、黎氏および「香港の混乱を目指す少規模の反中団体が中国の国家安全を危うくし、法の限界に挑む行動と活動で外部勢力と結託している」との声明を出した。

原題:Hong Kong Media Tycoon Arrested in Blow to Democracy Camp (2)、U.K. ‘Deeply Concerned’ About Arrests in Hong Kong: Spokesman、China Calls U.K. Comments on Hong Kong Arrests ‘Irresponsible’(抜粋)

(7段落目以降に英首相報道官の発言と中国側の反応を追加して更新します)

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