2020/8/9

【亀山×北川拓也】ハーバードの物理学者が「ビジネス」に転じた理由

DMM.com 取り仕切り役 会長
「亀っちの部屋」Season2。DMM.com会長の亀山敬司氏がゲストを迎えて脱力系ながらビジネスの本質をつく対談企画だ。
今回のゲストは、データサイエンティストとして楽天の常務執行役員を務める北川拓也氏。理論物理学者としてハーバード大学で博士号を取得後、2013年、楽天に入社する。
大学に籍を残さずビジネスの世界に身を投じた理由を、「人間を科学したかったから」という北川氏。対談では、人間の進化についての理論が存分に語られた。
*音声はこちらからお聞きください

「人間の大量の情報」を求めて楽天へ

──北川さんは楽天の常務執行役員として、楽天でデータやAI分野の戦略・執行を統括されていますが、元々はハーバード大学で理論物理学を研究されていました。
亀山 理論物理学? どういう研究をしていたか、教えてよ。
北川 物理学は、大きく2つに分かれます。1つは「素粒子物理」など、物をどんどん小さい単位で見ていき、世界は何で構成されているのかを解き明かす学問です。
もう1つはそれと逆で、原子など小さいものを組み合わせていき、どれだけ役立つものが作れるかを研究する学問です。たとえば超電導物質や半導体などを扱う「物性物理」といわれるジャンルで、僕はこちらを専攻していました。
北川 拓也(きたがわ・たくや)/楽天 常務執行役員
1985年生まれ。灘中学・高校卒業後、ハーバード大学に進学。数学、物理学を専攻し、ハーバード大学院にて博士課程を修了した理論物理学者。2013年、楽天株式会社に入社。現在、常務執行役員を務める。
亀山 難しくてさっぱりわからないや。
北川 亀山さんにこれを話すの、2回目ですけど(笑)。
亀山 何回聞いてもわからない(笑)。どうしてそこから楽天なの?
北川 僕が研究していた世界は「自然科学」といわれます。「自然」は人間との対比として生まれた概念で、これまでの科学は、世の中で起きる「人間以外」の現象を理解しようとしていました。
ただ僕自身、理論物理学を一通り経験して「次は、人間そのものを科学してみたい」と思うようになった。
考えてみると、これだけ「人間以外」の自然が科学されてきたのに、人間の行動や存在意義が今まで科学されなかったのは、明らかにいびつなことです。アインシュタインのような天才物理学者たちも、本当はやりたかったに違いない。
でも当時は、データや実験環境が少なすぎてできなかったんですね。それがインターネットが出てきて人の行動がデジタル化され、この10年で急に可能性が出てきた。
そこで、人間の大量の情報、つまりビッグデータがあるところに行きたいと思っていたところ、三木谷(浩史氏、楽天会長兼社長)に声をかけてもらったというわけです。
亀山 学者を続けるよりも実ビジネスのほうが、学びが多そうだと感じたんだ。もうちょっと柔らかく言ってね(笑)。
亀山敬司(かめやま・けいし)/DMM.com会長
1961年、石川県加賀市生まれ。石川県でレンタルビデオ店を開業後、1998年にインターネット事業に参入。現在、動画配信、ゲーム、3Dプリンター、英会話、FX、太陽光発電、教育事業など、多岐にわたる事業を展開している。
北川 はい(笑)。僕はもう趣味の域と言えるくらい、学ぶことが大好きです。でも学者は一度経験したし、本で学ぶのはいつでもできるじゃないですか。だから次はビジネスの世界で、人に揉まれながら学びたいと思いました。
今は楽天のデータ・AI分野の責任者として、データを集めて使える形にし、それが価値を生み出すまでの一連のバリューチェーンを担当しています。

人間関係で悩むのも「学び」

亀山 それで、実社会に入ってみてどんな感じ? データから人の動きが見えるのもおもしろいだろうけど、人間関係で苦労するのも学びになるんじゃない。楽天ほどの大きな会社だと、社会での立ち位置も複雑だろうし。