【篠原かをり】人間はゴキブリの「本当の顔」を知らない

2020/7/18
博覧強記の動物オタクとして知られ、「日立 世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターとしても活躍する、作家の篠原かをり氏。
新刊『ネズミのおしえ』(徳間書店)を上梓したばかりの篠原氏が、生物界の「多様性」の核心を語る本連載。第2話では、われわれ人間が大嫌いな「あの生き物」の真実をひもとく。
【新】大人気ミステリーハンターの、仰天「生き物講座」

生き物どうしの「関係性」に注目

──篠原さんの動物とのファーストコンタクトは、何歳くらいにまでさかのぼるのですか?
篠原 幼いころ、父が毎週のように野毛山動物園という無料で入れる市立の動物園に連れていってくれて、そこのふれあいコーナーの常連でした。
自分で記憶しているのは3、4歳くらいからですが、写真では2歳にもならないころから動物に触っている姿が残っていますね。
初めて飼った動物は、5歳のときに父からもらったハムスターです。クリスマスの朝に起きたら箱が置いてあって、それがガタガタ動いていてものすごく嬉しかったのを覚えています。
(Westend61/Getty Images)
──篠原さんの本を読んでいると、動物愛の「守備範囲の広さ」に驚かされます。「サカナ好き」とか「爬虫類好き」とかではなく、生き物全般に対する尽きせぬ興味はどのように育まれたのでしょう?
確かに、動物好きに限らず、オタクやマニアって専門が細かく分かれていますよね。
昆虫マニアの中でも「蝶屋」とか「甲虫屋」とか「糞虫屋」とか、ものすごくたくさんのジャンルがある。そうやって対象を絞り込まないと、さらに先へと掘り進めないというのはわかります。自分の手に負える範囲には限界がありますから。
ただ私の場合、コレクター気質というよりも、ヒトも含めた「他の生物との関わり合い」の中で生き物を見ているところがあります。生物は単体では存在し得ないので、全体としての生態系のほうに興味があるのです。
なので、「この人が好き!」とかではなく、「人間が好き!」みたいな感じで、生き物について「広く浅く」知りたい。一種類の生物を深掘りするより、できるだけ多くの生物について知ることで、点と点を線で結んでいって大きな面にしたいという感覚があるのだと思います。
もちろん、その中でもやっぱり「推しの動物」はいます。例えば昆虫だとフンコロガシとかですね。
逆に、自分としては特別に興味があるわけではないけれど、人がやたら怖がるから、なぜそんなに嫌われているのか知りたいなと思って、ゴキブリを飼ってみたこともあります

「ゴキブリ」の意外なかわいさ