モデルナのコロナワクチンで患者全員が抗体を獲得-初期段階の試験
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研究結果はさておき、まずこの研究の立ち位置を改めて振り返ってみると、病原体が特定され共有されてから、45日でワクチンの製造が終わり臨床試験用にNIAIDに届けられているという事実、66日でワクチンが実際に人の被験者に投与されたという事実は、それだけでも歴史的な快挙です。
パンデミックにやきもきする日々を送っている我々にとって、このプロセスはとても遅く感じられるかもしれませんが、普通であれば、何年もかかるプロセスであることを忘れてはなりません。それをこの緊急事態に直面して、たったの66日で実現してしまったというのは、改めて科学の力以外の何物でもありません。
そして、半年後には、このmRNAワクチンという全く新しい形のワクチンの第一相試験の結果を見ることになるとは、常識を持った人であれば、期待や予想を遥かに超える出来事だったのではないでしょうか。
結果が出なければそれまでという要素もあるかもしれませんが、まずはそれだけでもとても感慨深い出来事、論文ではないかと思います。
結果を報告した論文は、昨日付でNEJM誌のトップ記事を飾っています。
https://www.nejm.orgモデルナの治験フェーズ1のデータが論文として公開されました。モデルナが開発したワクチンはmRNAを使用した核酸ワクチンです。核酸を使用したワクチンは、従来のウイルスそのものを使用するワクチンに比べると開発の時間が短縮できるので、ワクチン開発競争の先頭を走っています。これまで認可されたことのある核酸ワクチンは存在しないため、人類はまさに今新たな一歩を踏み出しています。
フェーズ1の最大の目的は安全性の確認だったわけですが、次の治験を続けられる安全性は確認できたということで最初のハードルはクリア。もう1つの大事な初期ハードルは「この新技術でそもそもちゃんと抗体産生を誘導できるのか」になるわけですが、抗体の誘導が確認でき、さらには試験管内の実験で中和抗体の存在が確かめられたことに関しては初期ステップとして朗報だと思います。(中和抗体はウイルスが細胞に侵入するのを邪魔する性質がある。)
しかし、まだワクチンの有効性に関して証明できたわけではありません。このワクチンは27日から後期治験が開始されます。規模を拡大し、ワクチンドーズを固定し、プラセボ群も用意し、安全性と有効性が両立するかがさらに調べられます。
○米モデルナ、コロナワクチン後期治験を27日から開始
https://newspicks.com/news/5069091?ref=notification
○論文
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2022483?query=featured_home
これまで免疫関連の基礎知識解説を過去のコメントに織り交ぜてきました。ご興味がありましたら、私のプロフィールとPickをご覧になってください危機の時に科学は進歩するのだなぁ。mRNAワクチンがもし治験に成功したら、それは体内で薬をリアルタイムにカスタマイズして生成するという夢のような人工免疫システムへの第一歩なのだから。