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注目のコメント
台湾の民主制は、韓国もそうですが、多くの犠牲者を出した民主化運動を通して勝ち取られたものです。その結果、現在の台湾には、東アジアのどの国よりも、政権交代可能な二大政党制が安定して競合する政治があります。
ただ、犠牲者を出して民主化を勝ち取った国というのは世界各地にあります。そういった国であれば、新型コロナウィルスにうまく対処できているかといえば、それは違います。
東アジアのみならず、世界中で新型コロナウィルスへの対処が最も成功しているのは台湾とベトナムでしょう。この2カ国には2つの共通点があります。
① 中華人民共和国に対する諜報網を最も張り巡らした国であること
台湾もベトナムも、中国と戦争を繰り返してきた国です。中国との次の戦争の可能性についても、世界で最も真剣に検討している2カ国です。莫大なリソースを投じて、様々な方法で中国の様々な情報を常時収集しています。武漢で感染症が発生した時に、公表される以前に最も早く把握したのはこの2カ国でしょう。中国政府が隠密裏に大規模な対処を準備していた内容についても最も早く探知していたでしょう。
② 住民の生活の末端まで把握し統制できる組織があること
中国でも、中国共産党の地区単位、職場単位の委員会が、農村の末端まで張りめぐらされており、それが住民の生活を監視し、統制したことが感染の抑止に最も効果を発揮したと考えられます。ベトナムにも同様に、住民生活の末端まで張りめぐらされた共産党の委員会があります。
台湾の場合、戦前の日本時代につくられた隣組や特高警察もありましたが、その後で台湾を統治した中国国民党も、警察によって監視する抑圧的な体制でした。中国との次の戦争に備えて、全男性に軍事訓練を課している国でもあります。住民を管理し、動員できる行政機構自体は今日まで存続しています。それが、新型コロナウィルス制圧に非常に有効なことが、東アジア諸国でハッキリと現れました。世界最高レベルの新型コロナ抑え込みを見せている台湾。その背後にある民主主義とソフトパワーの力を読み解きました。
国民一人ひとりがしっかりと政治に参画することで、政治と国民との間に緊張感が生まれているのが台湾です。それが政治側の適切な政策や人材登用、情報の透明化をもたらし、民衆の側の政治に対する信頼を引き出しています。
そんな民主主義の好循環のもとで行われるコロナ対策は、ソフトパワーとして世界に評価され、ハードパワー大国の中国と台湾が向き合ううえでの最大の「武器」となっています。
表面的な良し悪しの比較ではなく、本質的なところから日本は台湾に学ぶところが多いと考えながら、この原稿を書かせていただきました。台湾のコロナ対策を見て、「アジアの最先端はここにある」と感じた方も多かったのではないでしょうか。しかもこの成果を、情報が十分に入ってこない「国際的孤立」状態で果たしたということも、驚きを禁じえません。その背景にある国家的戦略について、東アジアを長年取材されてきた野嶋剛さんに、執筆いただきました。