[イスタンブール/パリ 10日 ロイター] - トルコのエルドアン大統領は10日、イスタンブールの世界遺産アヤソフィアをモスクに戻して拝礼の場にすると述べた。アタチュルク初代大統領によるモスクから博物館への変更が違法とするトルコ最高行政裁判所の判決を受けた。

1500年の歴史を持つアヤソフィアはキリスト教徒とイスラム教徒双方から崇められている。国外からは、アヤソフィアの地位を変えるべきでないとの声が上がっていた。こうした圧力を物ともせずエルドアン氏は判決が出た1時間後に新政令を発表した。

ギリシャの文化省はトルコ裁判所の判決について文明世界に対する「あからさまな挑発行為だ」と述べた。

エルドアン氏は17年にわたる統治下で、トルコ政治のイスラム化を図ってきた。6世紀に建立されたアヤソフィアをモスクへ戻すと長らく提唱してきた。非宗教的な国を追求したアタチュルク初代大統領の下、アヤソフィアは博物館となっていた。

裁判所は判決で「アヤソフィアがモスクに部類され、この分野以外での使用は法的に可能でないとの判断に至った」と述べた。「アヤソフィアのモスクとしての使用を止め、アヤソフィアを博物館と定義した1934年の政令は法を順守していない」とした。

議会では、エルドアン氏が政令を読み上げた後、与党・公正発展党(AK党)の議員が立ち上がって拍手喝采した。

ワシントン中近東政策研究所でトルコ研究プログラムの責任者を務めるソネル・チャープタイ氏は、非宗教的な国を目指したアタチュルク氏の最も象徴的な動きを覆したことでエルドアン氏は日常生活にイスラム教を取り戻す計画を成し遂げたと述べる。

タス通信によると、ロシアの東方正教会は、裁判所が判決を下す際に東方正教会の懸念を考慮しなかったことを残念に思い、判決はさらなる分離に繋がる可能性があると述べた。

国連教育科学文化機関(ユネスコ)はトルコの決定を受け、アヤソフィアの世界遺産としての地位を見直すと明らかにした。世界遺産登録に必要な国境や世代を超えた重要な遺跡としての普遍的価値に対する影響という点で、今回の決定が疑義をもたらすと指摘した。

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