【解説】豊田章男の言葉から、「トヨタの10年」を振り返る
この時代は、トヨタが世の中から一番称賛されていた時期でもあり、時の勢いに任せて身の丈以上に規模の拡大を進めた結果、人材育成が疎かになり、のちのリコール問題にもつながっていったのだと思います。
(2020年 株主総会にて)
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6月11日の株主総会で、豊田社長はメディアに対する不信感を示しました。背景には、21年3月期の決算報道があります。
リーマンショック時は4600億円の赤字だったのに対し、コロナではそれ以上の販売減にもかかわらず、5000億円の黒字予想。トヨタは体質強化の「成果」を示したとはずでした。しかし「営業利益8割減」と報道され、それに社長が納得できなかったようです。
個人的には、5000億円という数字はそれほど重要ではないと感じます。「販売台数22%減」という仮定をもとに弾き出しているので、コロナの第二波でまたロックダウンにもなれば、前提が崩れてしまうからです。
それよりも重要なのは、この10年間で損益分岐点が下がったこと。トヨタはどう変わったのか。硬派に分析してみました。ご一読いただければ、自動車ビジネスの構造やトヨタの10年間を、ざっと理解できるはずです。
自動車メーカーにとって、「販売台数目標」はいまや間違ったメッセージです。かつては400万台クラブ、1000万台クラブと言われてきましたが、トヨタやホンダ、VWなどは品質問題(不正)を経て、すでに販売台数をターゲットにしない方針へと大きく舵を切っています。
「02年から年間50万~60万台の生産設備を新たに作り、07年くらいまで一気に(生産規模を)上げてきた」「あまりにも拡大のペースが速過ぎて、国内の技術員や開発人員が海外の新工場に支援に行く。そのため国内には、知恵や新技術を入れた生産ラインを検証して作る時間もなく、人材もいなかった」(トヨタ河合満専務=当時。2015年4月3日就任懇談会)
トヨタ設計革命の真実
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/13624
「(600万台目標の)重圧が直接、開発現場にのしかかるわけではない。ただ、ここから逆算して車種構成を考えたとき、各地域で売らなければならない台数、それを満たすモデル数は、必然的にかなり増える。どうしても数字を埋めていく作戦になりがちです。(──台数を求めるより、種類が増えることの方が負荷になる)そう。1箱(1車種)100万台の大ヒットで、6箱で(目標を)達成できるかといえば、それは無理筋です。現場は「このモデルもあのモデルも要求があったから開発しよう」となり、忙殺され、能力はいつしか限界を超える」(福尾幸一・ホンダ専務執行役員=当時。2015年3月)
ホンダ リコール危機の教訓
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/12759
これに対して、長らく販売台数目標を取り下げてこなかったのがゴーン日産でした。トヨタの教訓から10年、最後に軌道修正を図ったのが日産だったと言えるのかもしれません。
「今、我々が600万台やるんだ、650万台売るんだという目標を掲げるのかというと、そうではない」(日産・内田誠CEO。2020年6月)
日産のDNA
https://newspicks.com/news/4993561/
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