【超解説】危機にこそ、「文化」が重要だ

2020/6/20
我々の消費様式・行動様式を変えた新型コロナウイルスは今後、我々の社会全体をどのように変えていくのだろうか。社会の鏡とも言える文化の栄枯盛衰を、過去の危機から考える。
昨年10月に著書『現代美術史』(中央公論新社)を発売した、新進気鋭の文化研究者・山本浩貴氏に、アフターコロナの文化論についてオンラインで話を聞いた。
山本浩貴(やまもと・ひろき)文化研究者/1986年千葉県生まれ。一橋大学社会学部卒。2018年、ロンドン芸術大学博士課程修了。2013〜18年、ロンドン芸術大学トランスナショナル・アート研究センター博士研究員。韓国のアジア・カルチャーセンター、香港理工大学を経て、2020年1月より東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科助教、現在に至る。2019年10月に著書『現代美術史』(中央公論新社)を発売した

世界恐慌が作り出したアートマーケット

──危機的な状況はその後の文化にどのような影響を与えうるか。
歴史の大きな文脈をみると、社会的な危機はアートの歴史に大きな影響を与えてきました。
その一例として、現代アートのマーケットの勢力図を作り出した世界恐慌があります。
1929年に世界恐慌が勃発すると、アメリカ政府は、ニューディール政策を実施しました。この時にWPA(=Work Projects Administration、米国雇用促進局)が発足し、失業者の雇用を促進する大規模な政策が始まりました。
そこでの取り組みの中に「フェデラル・ワン」という芸術家に特化した政策があり、5つの芸術家領域への支援計画がスタートしました。