[8日 ロイター] - 米IBM<IBM.N>のクリシュナ最高経営責任者(CEO)は8日、米有力議員らに宛てた書簡で、顔認証・分析ソフトウエアの提供をやめる方針を明らかにするとともに、国民の監視や人種的分析を目的とした使用に反対を表明した。

米国では黒人男性が白人警官による暴行で死亡した事件を受け、各地で抗議デモが行われている。

クリシュナCEOは、コリー・ブッカー上院議員やカマラ・ハリス上院議員らに宛てた書簡の中で「IBMは監視社会や人種的分析、基本的な人権や自由の侵害などといった当社の価値観や信頼・透明性の原則に合致しない目的での技術の利用について、他社が提供する顔認証技術も含め全面的に断固として反対し、容認しない」と述べた。

また、警察による取り締まりに関して一層の透明性と説明責任を求めた。

米政府当局者らは事件を受け、警察に対する監視強化に向けた改革を推進している。

IBMは顔認証事業からの撤退を決定した時期について説明しなかったが、クリシュナCEOは議員らに対し「今こそ、国内の法執行機関による顔認証技術利用の是非やその方法について、全国的な対話を開始する時だ」と呼びかけた。

CNBCによると、IBMの顔認証事業の売り上げはそれほど大きくない。関係筋はロイターに対し、すでにIBMは同事業の宣伝や販売、製品のアップデートをしておらず、必要に応じて顧客サポートを行っているのみだと語った。またアプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)のみならず、全ての形式において顔認証技術を使用した製品の研究開発なども取りやめており、その利用は視覚物体検出に限定しているという。

*内容を追加しました。